年金は女子のほうが「180万円」得って本当? 特別支給の老齢厚生年金の「受給開始年齢」に男女差があるのはなぜ? 背景についても解説
受給開始年齢に男女差ができた理由
受給開始年齢に男女差ができた理由は、厚生年金制度の歴史にあります。厚生年金制度ができた1944年当時、年金の支給開始年齢は、男女ともに55歳でした。 その後、1954年の改正で男性の支給開始年齢が60歳に引き上げられましたが、女性の方は55歳のまま据え置かれたのです。この当時は男女別定年制を導入していた会社が多く、男性に比べ、女性の定年年齢が低く設定されていたことが大きな理由のようです。 その後、労働条件の男女差解消の動きとともに、1985年の改正で、女性の支給開始年齢は男性と同じ60歳となりました。しかし最初に生じてしまった「5年の差」がその後も尾を引き、現在に至っているわけです。
受給開始が早い女性はいくら得?
そのような経緯はともかく、現在、女性はどのくらい得をしているのでしょうか。 1959年(昭和34年)4月2日生まれの男性と女性を比べてみましょう。同じ誕生日なのに、男性の支給開始年齢は64歳、女性の支給開始年齢は61歳と、3年の差があります。女性の方が3年も早く特別支給の老齢厚生年金が受給できるのです。 特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)は、会社員として働いた期間と収入で計算されるので、個人個人で受給額が異なります。そのため一概に「女性の方が何万円得」とはいえません。しかし仮に、特別支給の老齢厚生年金が月額5万円としても、男性より3年分多く受給できるのですから、総額で180万円得をする計算になります。
まとめ
特別支給の老齢厚生年金は、2023年現在、まだ支給開始年齢引き上げの途上です。引き上げが終わるのは2030年で、1964年4月2日から1966年4月1日までに生まれた女性が、65歳より前に年金を受け取る最後の受給者となります。 ちなみに男女雇用機会均等法が制定されたのが1980年で、この年代が就職年齢に達した頃と一致します。あてはまる年代の方は、ぜひ自分の年金について今一度確認してみてください。 出典 日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金 厚生労働省 平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~ 厚生労働省 資料II-23 日本の年金制度における女性に関係する制度改正の経緯 執筆者:橋本典子 特定社会保険労務士・FP1級技能士
ファイナンシャルフィールド編集部