“モノを転がして大きくする”──ただそれだけなのに面白い『塊魂』シリーズの魅力を改めて語りたい。シンプルなルールと直感的な操作方法は、気づけば時間が過ぎ去ってしまう中毒性を持つ
“転がして大きくするゲーム” これが、2004年にPlayStation2に彗星の如く出現した稀代のバカゲーであり、神ゲーである『塊魂』のパッケージに書かれた文言です。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 この一文が表すように「塊を転がして大きくしていくだけという」極めてシンプルながらも他に類を見ないコンセプトの『塊魂』は、その抜群の発想を最大限に活かすために様々な工夫が施されたロマンチックアクションゲーム。 その誰にでも分かるシンプルなルールと直感的な操作方法、リアリティを追及しすぎないグラフィックが評価され、家庭用ゲームソフトとして初めて、素晴らしいデザインの製品に送られるグッドデザイン賞を受賞するなど、ゲーム史の中でもひときわ異彩を放つ存在です。 そんな本作は根強い人気があり、続編として『みんな大好き塊魂』『僕の私の塊魂』『ビューティフル塊魂』『塊魂TRIBUTE』『塊魂 ノ・ビ~タ』といった作品が多機種にわたって展開された他、初代『塊魂』のリマスター版『塊魂アンコール』が、2018年にNintendo SwitchとSteamで、2020年にPlayStationとXbox Oneで配信されています。 さらに、2023年6月には、『塊魂』の続編である『みんな大好き塊魂』のリマスター版、『みんな大好き塊魂アンコール+王様プチメモリー』が『塊魂アンコール』同様、各機種で発売されました。 そこで今回は、既にリマスター版が発売されている、初代『塊魂』と続編『みんな大好き塊魂』を主に取り上げ、本シリーズの持つ魅力についてお話していければと思います。 文/DuckHead ■塊魂とは 塊を転がして、周囲のモノを巻き込む。それが、『塊魂』シリーズの全てです。 そして、その基本ルールは、ステージスタートからゲームクリアまで、塊を転がして周囲のモノを巻き込んで雪だるまのように大きくしていくというもの。 ただ、何でもかんでも巻き込むことができるのかというと当然そんなことはなく、塊よりもある程度サイズの小さなものしか巻き込むことができません。 今の塊が巻き込めないモノは全て障害物となり、プレイヤーの進路を妨害してきます。塊が障害物に衝突すると、巻き込んでいたモノたちが周囲に飛び散り、塊のサイズが小さくなってしまうため、どれが巻き込めてどれが障害物になるのかを見極める事が大切です。 中には、動物や自動車のようなステージ上を動き回っている障害物もあるため、塊の周囲にも入念に気を配らなければなりません。 そして、巻き込めるモノを巻き込み続けて塊を大きくすれば、それまで障害物だったモノも巻き込めるようになり、塊は更に巨大化していくのです。 この、「周囲のモノを巻き込んで塊が大きくなっていく過程」は、“快感” としか言い表しようがありません。それが何に由来している快感なのかは分かりませんが、この快楽の存在により『塊魂』シリーズは熱中度と没入感が高く、気が付けば時間が過ぎ去っているということもしばしば。 ゲームをしていない時でも、無意識のうちに「あの建物巻き込んだら楽しそうだな……」などと考えてしまっていたので、その中毒性はかなりのものと言っていいでしょう。 また、周囲のモノを巻き込んで大きくするというゲームだけあって、『塊魂』シリーズの地球はとても散らかっていて、家も町も世界も、巻き込めるモノで溢れかえっています。 そのグラフィックは、当時のPlayStation2においてもチープなポリゴン。これは、「誰にでも楽しめる」ゲームを目指した結果辿り着いた表現方法とのことで、リアリティの薄さ故に、塊を転がして大きくするというシステムに集中してゲームを楽しむことができるのです。 そんなモノにまみれた世界ですから、塊を大きくしていく過程で「そんなわけねぇだろ」とツッコミを入れたくなってしまうような場面に出くわすのは日常茶飯事。シュールでナンセンスなゲームシステムにバッチリとマッチした、見事な遊び心をゲーム中の至る所で見ることができます。 こういった小ネタたちは、『塊魂』シリーズの魅力を高めている要素の1つ。 本シリーズに収められた遊び心のセンスは、これまでに巻き込んできたモノたちを確認できる素敵コレクションの説明文に凝縮されています。これを眺めているだけでも時間があっという間に過ぎ去ってしまうのがまた恐ろしいところ。 『塊魂』は、シンプルなゲーム性に飽きがこないよう、様々な工夫がなされているゲームなのです。 ■塊を転がして大きくする楽しさを世の中に知らしめた、初代『塊魂』 『塊魂』シリーズの基本をお話したところで、まずは初代『塊魂』について詳しく見ていきましょう。上の画像が本作のオープニングムービーなのですが、最初からシュールさとナンセンスさがフルスロットル。バカゲーのかぐわしい香りをあたり一面にまき散らしています。 そして、本作のストーリーは、ある日酔っぱらって夜空に燦然と輝く星たちを全て壊してしまった王様が、事件の後処理として息子の王子に塊を作らせ、その塊を天へ打ち上げて星にして、夜空を復活させるというもの。 ことの始まりもバカゲーらしさタップリな本作。私の『塊魂』初プレイは中学生の頃だったのですが、当時このストーリーに感心したことを覚えています。 物を巻き込んで大きな塊を作るという発想の面白さもさることながら、そのシステムを成立させるためのストーリーとして、「巨大な王様が星を全部壊してしまったから、塊を作って夜空の星にしてしまおう」なんていう発想が、どんな人生を送れば出てくるのだろうかと思ったのです。 際限なく続くバカバカしさの中で、時折ハイセンスが顔を覗かせる。これが『塊魂』シリーズの大きな魅力の1つであると言えます。 さて、王様が一夜にして壊してしまった夜空の星たちを復活させるためには、地球で塊を転がして周囲のモノを巻き込み、制限時間内で塊の大きさを王様が定めたサイズにすればOKです。 当然のことですが、制限時間内にその条件が達成できなければゲームオーバー。王様から大説教を食らってしまいます。冷静に考えれば、「お前の蒔いた種だろ!」って話なんですが、ゲームオーバーを経験する頃にはこのゲームの世界観にドップリとハマり込んでおり、不甲斐ない己を責めることはあっても、王様を責めようなどという気持ちは全く湧かなくなってしまっているのが不思議なところ。これが洗脳というやつだったのかもしれません。 逆に、目標サイズに達するまでのスピードが速かった場合、塊は星と同時に流れ星も生み出します。これを拝むことができるということは、『塊魂』が上達しているという証。目に見える評価基準というものは、こちらのやり込みモチベーションを高めてくれます。 さて、塊を転がして大きくする過程がただひたすらに面白い『塊魂』ですが、塊を転がして、信じられないくらい巨大にする……という快感を、最初から味合わせてはもらえません。 実は『塊魂』の世界にも下積みがあり、最初は練習がてら、10cmの塊をつくるところからスタートします。 そして、ステージを重ねるごとに王様の提示してくる目標サイズが少しずつ大きくなっていき、それに従って徐々に塊も巨大に……というのがゲームの流れ。 この、ステージをクリアしていくことで目標サイズが少しずつ増加していくというシステムは、ステージクリア後に今すぐにでも次の塊を転がしたいという気持ちにさせてくれる素晴らしいものだと思います。 なお、制限時間内に塊が既定の大きさに達した場合、そのタイミングでステージが即終了するというわけではなく、残り時間が0になるまで塊を転がして大きくし続けることが可能です。 制限時間内にどこまで塊を大きくすることができるか。これが、『塊魂』のやり込み要素の1つになるのです。 さて、夜空の星々を作るためにはとにかく塊を大きくすればOKですが、実は本作でのゲームルールはそれだけではありません。 例えば、星座を作る場合は2種類のゲームルールが存在します。 まずは、制限時間内に特定のジャンルのモノを多く集めるというルール。 このルールは、ウオ座を作る場合は魚を、ハクチョウ座を作る場合はハクチョウを……といった具合に、作る星座に合わせた物を沢山巻き込んで塊にするもの。 魚はともかく、ハクチョウのように生物種を限定してしまったら、塊を大きくする面白さが無くなってしまうかと思うところですが、そこは稀代のバカゲー『塊魂』。ハクチョウは卵の状態でステージに置かれており、巻き込むまでそれがハクチョウなのかアヒルなのかヒヨコなのか、はたまたスーパーに売られているような卵なのかがほぼ分からないようになっています。最早別ゲーの様相を呈していますが、これもまた、ゲームに飽きさせないための工夫と言えるでしょう。 そして、この特定のジャンルのモノを集めるルールの中でも特に私が好きなのが、ふたご座ステージ。 初回プレイ時は、それこそ「双子なんてそんなにバリエーション作れないだろ」と思いながらステージを始めたのですが、これは完全なる杞憂でした。 ……何故なら、公式が「これは双子だよ!」と認定していれば、その1組は双子になってしまうのですから。 要するに、ゲーム内で双子と設定されていれば、それは誰が何と言おうと双子というわけで。上の画像のように、「ナガグツ」だって双子なのです。『塊魂』の世界では、存在するものの多くに双子という概念が存在しており、パンプキン、自動販売機、トロフィー、時計の文字盤や針、公園の門なども双子として塊の中に巻き込む事ができます。 「無理矢理過ぎるだろ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんし、その意見には全面的に同意せざるを得ないのですが、私としては作り手の遊び心が存分に味わえるこのステージが大好物。このナンセンスなギャグたちもまた、『塊魂』シリーズの魅力なのです。 ちなみに、ふたご座を作るためには、3ツ子や4ツ子、ましてや5ツ子などは完全に不要。巻き込んだところで、双子としてカウントされないばかりか、王様から注意もされてしまいます。こういう小ネタも抜かりありません。 そして、もう一つのパターンが、該当するモノを1つだけ巻き込めばいいオオグマ座とオウシ座。 このルールの恐ろしいところは、クマとウシの範囲が広すぎること。 例えば、木彫りの熊がクマとして判定されたり、 牛乳がウシとして判定されたりします。 まぁ、木彫りの熊は熊の形ではありますし、牛乳はウシから生まれ出ずるものですから、百歩譲ってクマやウシとして認可出来ないこともないんですが、「ふざけんなよ」という感想しか出てこないのが、上の画像のモーモーコーン。 これは、白と黒のまだら模様、牛柄の三角コーンで、どう見てもウシではありません。 初めてこれを巻き込んでゲームセットになったときには、何が起こったのかが全く分からず、驚きのあまり数秒間画面を見つめ続けてしまいました。 素敵コレクションでは「特にまだら模様になっている理由はなさそうだ」と説明されているあたり、制作陣の悪意しか感じられません。 ……一方で、「牛を盗むな」の看板はウシと判定されました。 これらの極小サイズのクマやウシたちのタチの悪いところが、罠のようにステージ上に配置されていること。これらの極小ウシクマトラップに加えて、ステージ内ではクマやウシが大も小も徘徊しているため、こちらに巻き込む気が一切なかったとしても、相手から巻き込まれに来てくれやがることもあります。 そのため、ステージスタート時の塊よりも大きいウシやクマを巻き込むためには、これらのトラップたちを避けながら塊のサイズを大きくしていくことが必要不可欠となり、通常のとにかく塊を大きくするルールと比較して、そのゲーム性はかなり変わってきます。正直、ストレスフルです。辛い。でも、楽しい。 そして、『塊魂』最後の特殊ルールが、塊のサイズを10mピッタリにするというもの。このルールの際は、なんといつも画面左上に表示されている現在の塊の大きさを示す数値が出現しません。 そのためこのルールで頼みの綱となるのは、ステージスタート時に王様が提示してくれる10mの丸と、己の経験のみ。 これをこれだけの数巻き込んだから、今はこのくらいの大きさになっているだろうという塊のサイズをおおよそ把握する能力、「塊感」とでも言うべき力が、攻略の鍵を握ります。 つまりこれは、『塊魂』をどれだけ愛しているかの指標になるゲームルール……なのかもしれません。 さて、『塊魂』を語る上で忘れてはならないのが、ステージクリア後に挿入されるホシノ一家の物語です。 何とも言えない古さを感じる顔の家族から繰り出されるのは、信じられないレベルの棒読み台詞。 特に、ホシノ家の娘であるミチルによる「はっ!感じる!コスモを感じるわ!」のインパクトは絶大。初プレイから20年近く経った今でも時折頭の中に流れてくる『塊魂』シリーズ屈指の名台詞です。 本作をプレイした人の多くの頭に刻み付けられているであろうこの棒読みもまた、『塊魂』の世界観に非常にマッチしています。 他の作品であれば許されざる暴挙ですが、ゲーム全体を支配する空気感から察するに、この空前絶後の棒読みも恐らく計算の上で、あえてこういった演出にしているのだと思います。こういったところにも見える緻密さが、本作を神ゲーにまで押し上げているように思えてなりません。……考えすぎかもしれませんが。 ■初代からの正統進化、続編『みんな大好き塊魂』 さて、『塊魂』の続編として2005年に発売されたのが、『みんな大好き塊魂』。これは、夜空に星を戻したことで人気者となった王様が、地球にいるファンたちの願いを叶えていくというストーリー。自分のしくじりを元に戻させただけで人気者になるという、いささか変な流れではありますが、実際私も前作をプレイして王様のファンになっていましたから、この人気っぷりも納得ではあります。 そんな本作では、前作に登場したルールで遊べる他、塊を使った新たな遊び方が数多く提示されています。今回は、その中からいくつか私のお気に入りルールをご紹介していきたいと思います。 まず最初は、募金。これは、塊に巻き込んだモノの合計金額をどこまで高くすることができるかを競うルールです。 人間や調理前の動物などのようなイノチがあるものには値段がつきませんし、いつものようにただ周囲のモノを沢山巻き込んでいるだけでは好記録を狙えないので、どこに高いものが置かれているのかを把握することが大切になるこのルール。やりこみとルート構築が攻略のカギを握るので、かなり分かりやすく上達が実感できるモードとなっています。 実際、この機会にオリジナル版の『みんな大好き塊魂』で遊んでみたのですが、過去に出した自分の記録を抜ける気が全くしませんでした。どうやら、記憶の彼方に忘れ去られてしまった高額商品が、どこかで塊に巻き込まれるその時を待ち続けているようです。 続いては、相撲。 これは、力士を転がして食べ物を巻き込んで体重を大きくし、制限時間内に対戦相手を倒すというルール。この発想の時点で、かなりの大好物です。 食べ物を吸収して大きくなる力士の姿はナンセンスかつ滑稽で、『塊魂』シリーズがバカゲーたる所以をこれでもかと言うくらいに見せつけてくれています。 また、このルールの面白いところは、転がす塊が力士だということ。力士はいつものような球体ではなく手足があるため操作性に少しクセがあり、この点も相撲ステージの面白さに拍車をかけていますね。 ……まぁ、体重を増やし続ければ最終的に力士の体は球体に近づいていくのですが。 制限時間ギリギリまでとにかく食べさせて力士を巨大化させ、通常の相撲では起こり得ない決まり手で相手を倒せた時の爽快感は凄まじく、「このバカバカしさとシュールさこそ塊魂!」と改めて再認識させてくれる楽しいステージです。 そして最後は、キャンプファイヤー。 これは、炎のついた塊を転がして大きくして、制限時間内にキャンプファイヤーの薪を巻き込むことができればクリアというルール。 ご覧いただければお分かり頂けますように、本ルール最大の特徴は、塊が燃えているということ。 この熱く燃えたぎる塊は、水に浸かってしまうと当然の如く炎が消えてしまいますし、何かモノを巻き込まないと、少しずつ炎が小さくなっていってしまいます。つまり、一定時間が経過する前に断続的にモノを巻き込み続けなくてはならないということで、ゲーム中は短期的な制限時間に追われ続けることになります。 私の体感ではありますが、恐らくこのルールはシリーズの中でもトップクラスの難易度を誇っているのではないでしょうか。 さて、塊の可能性を大いに感じさせてくれる新ルールが多数採用されている本作ですが、前作のルールもブラッシュアップされており、正統進化した続編であることをヒシヒシと感じさせてくれます。 例えば、「勉強をしたいから周囲を明るくして欲しい」というファンの願いを叶えるステージでは、とにかく塊にホタルを大量に巻き込んで光球を作ります。これは、前作にもあった特定のジャンルのモノを巻き込むというルールをアレンジしたもの。 塊魂らしさに溢れたナンセンスな光景ではありますが、絵本の世界のようなファンタジックさも持ち合わせたこのステージは、プレイをしていると心が優しくなっていくような気持ちになる、とても好きなステージです。 そして、ホタルステージとは対照的に、全く優しい気持ちが湧き上がってこないのが、シリーズ最難関の “100万本のバラ” です。 そのルールは読んだまんま、バラを100万本集めるというもの。これもまた、特定のジャンルのモノを巻き込むというルールの亜種と言えますが、何よりも恐ろしいのが、クリアまでの道のりが険しすぎるということ。 なんと、ステージ上に落ちているのは、普通の一輪のバラか、十輪のバラが1つになった花束だけなのです。これらをひたすらに巻き込み続けて100万本というゴールを目指すわけですから、そこには尋常ならざる時間がかかるということが容易にご想像いただけるかと思います。 さらに、いくらバラの花を巻き込み続けても、塊は全然大きくなりません。つまり、このステージでは塊を大きくしていく楽しさは排除されており、常に一定のスピードで地道にバラを100万本集め続けることとなるのです。 これまでの人生で色々なゲームをプレイしてきましたが、この100万本のバラほど、「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ」と思わされたステージはありません。これは最早、ゲームで表現された純粋な狂気と言って差し支えないでしょう。 念のため付け加えさせて頂きますが、100万本のバラはゲームクリア後の隠しステージで、いわゆるお楽しみ要素。 一応、中断機能もありますし、ステージ上に置かれたバラは、塊で巻き込んだ後に一定時間が経過すると再び出現するので、とにかく根気よく続けていけば、いつか必ずクリアできるようになってはいます。オリジナル版で遊んでいた当時にネットサーフィンをした記憶では、このモードをクリアされた方もそれなりにいらっしゃるようです。忍耐力と集中力が皆無に等しい私からしますと、本当に頭が下がります。 このように、『みんな大好き塊魂』は、塊を転がして大きくするというベースを大きく発展させた作品となっているため、前作を遊んでいなくても楽しめる理想的な続編となっています。 続編だとストーリーについていけるかどうかが気になる方もいらっしゃるかと思いますが、本作ではその心配もありません。そもそも、塊魂にストーリーなんて無いようなもんですしね(小声)。 ■『塊魂』シリーズを彩る名曲たち さて、『塊魂』シリーズを語る上で欠かせないのが、本編中で使用されているBGMの素晴らしさです。 先ほどからお話ししていますように、塊魂の基本ルールは、制限時間内でどこまで塊を大きくすることができるか。 ステージによっては数分で終わるものもあるのですが、最終ステージになると、制限時間が25分になっていたりします。こうなると、1回ステージを遊ぶだけでもそこそこの長丁場。しかしそれが対して苦にならないのは、ゲームそのものが面白いということは当然として、BGMの力によるところも大きいと思います。 本作のステージBGMの特徴は、そのほとんどがボーカル付きだということ。これは、インストゥルメンタル曲が大半を占めるゲームミュージック界隈においては珍しいのではないでしょうか。 例えば、『塊魂』のオープニング曲「塊オンザロック」を歌っているのは、「大都会」や「愛を取りもどせ!」で知られるバンド、クリスタルキングの元ボーカリストである田中昌之さん(『塊魂』での名義は、田中雅将)ですし、エンディング曲「愛のカタマリー」や、『みんな大好き塊魂』のオープニング曲「塊オンザスウィング」を歌っているのは、圧倒的な歌唱力と日に焼けた黒い肌で知られるボーカリスト、松崎しげるさんです。 このように、『塊魂』シリーズの挿入歌の歌唱を担当したのは、豪華アーティスト陣。その顔ぶれは、とてもゲームミュージックのために集結したとは思えないメンバーとなっていて、楽曲のジャンルも多岐に渡ります。 そんな『塊魂』シリーズの挿入歌は人気が高く、『星のカービィ スーパーデラックス』の名曲「メタナイトの逆襲」のビッグバンドアレンジでグラミー賞を受賞したことで知られるThe 8-Bit Big BandがYouTubeにて公開した、『塊魂』の挿入歌「LONELY ROLLING STAR」のカバーが100万再生を突破するなど、国内に留まらぬ人気を見せています。 「つよがり塊」「真っ赤なバラとジントニック」「ケ・セラ・セラ」「さくらいろの季節』「ベイビー・ユニバース」「ナナナン塊」「カタマりたいの」「ヒューストン」「The Royal Academy of Katamari」。この辺りが、私の中での『塊魂』と『みんな大好き塊魂』の神曲。いささか神が多すぎる感じもありますが、今回はこれに加えて、シリーズの中でもひときわ異彩を放つ神曲をいくつかご紹介したいと思います。 まずは、新沼謙治が歌う、「月と王子」と「DISCO★PRINCE」。これは、演歌歌手の新沼謙治さんに何故かラップを歌ってもらっている挑戦的な楽曲で、サウンドトラックでのご本人のコメントによれば、「月と王子」がラップ初挑戦とのこと。 ゴリゴリの演歌歌手が歌うノリノリなラップ。このギャップによる違和感が非常に心地よく、一度聞けばクセになってリピートが止まらなくなる名曲です。 続いては、『みんな大好き塊魂』の「灼熱のサバンナ」。 これは、前作『塊魂』で使用された挿入歌のメドレーとなっていて、ただそれだけでもシリーズファンとしてはテンションが上がってしまうんですが、この楽曲が異彩を放つ理由は、歌唱を担当したアーティストにあります。 そのアーティストというのが、イヌのジョン、アヒルのビッグマウス、カラスのユウヒ、ヤギのペー、ブタのブービー、ネコのセクシー、ウシのニュウ、サルのミザリー、イヌのコロ、ゾウのパオ、ライオンのニクスキー。 豪華アーティスト……とは言い難い上に、この名前にピンとくる方は皆無に等しいでしょう。実は、「灼熱のサバンナ」は、動物たちを塊に巻き込んだ時に発せられる鳴き声だけで構成されている楽曲なのです。言うなれば、公式の音MADといったところ。 更にこの曲、動物たちの鳴き声しか聞こえてこないのにも関わらず、サウンドトラックに歌詞カードが収録されています。そこに歌詞として書かれているのが鳴き声の意訳とはいえ、これは歌詞カードで表現された完全なる狂気と言って差し支えないでしょう。 最後に紹介するのは、「キングオブキングのうた」。 壮大なメロディーで始まるこの楽曲を演奏しているのは、ワルシャワ・フィル・ハーモニー管弦楽団。日本のゲーム音楽の演奏をいくつか担当したことでも知られるポーランドのオーケストラです。 そして、このオーケストラ演奏に合わせて歌うのは、なんと我らが王様。前作で王様は声を一切発しなかったため、この歌が王様の声の初披露の場となりました。 そんな王様の声優を担当したのは、俳優の宮崎吐夢さん。少々古い話になってしまって申し訳ありませんが、往年の人気Flash、ペリーシリーズのペリーや「バスト占いのうた」の声の主と聞けばピンとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ……これらの具体例でピンときた方ならばお気づきのことと思いますが、王様の声は脱力感100%です。非常に気の抜けたボイスをしていて、いい意味で威厳が全くありません。この威厳の無さこそが素晴らしいポイントで、『塊魂』をプレイしていた時の王様のイメージそのもの。まぁ、どちらかと言えばペリーよりも「バスト占いのうた」の時の声に近いんですが。 ポーランドのオーケストラに演奏してもらった壮大なメロディーの中を漂う気の抜ける歌声と緩い歌詞。これぞ、壮大なことをやっているはずなのに気の抜けるような中身の塊魂シリーズを端的に表しているような神曲なのです。 さて、ここまで『塊魂』『みんな大好き塊魂』の楽曲を紹介してきましたが、シリーズの続編として、『塊魂』と『みんな大好き塊魂』の楽曲たちのカバーも挿入歌として使われている『塊魂TRIBUTE』という作品も発表されています。 この作品は、塊を転がして遊ぶメインゲームでも過去作のステージが使用されているため、まさにトリビュートアルバムかのような構成となっているゲームです。 ■さらに大きくなる塊魂の世界 冒頭でもお話しましたように、『塊魂』『みんな大好き塊魂』以降もシリーズは多機種にわたって展開されています。そんな続編の1つである、Xbox360で発売された『ビューティフル塊魂』では、熱いモノを巻き込んで塊の温度を上げるステージなどが新たに登場。ステージ上には、塊を冷やす冷たいモノが罠のように至る所に設置されています。 さらに『ビューティフル塊魂』では、王様まで転がせるようになりました。先ほどの力士とは違い、膝を抱えて体育座りをしたどこか物憂げな表情の王様を転がす様はシュールの極み。 そして、挿入歌も相変わらず素晴らしく、「Sayonara Rolling Star」「Katamari Dancing」「Boyfriend a GOGO」「恋の稲刈り」辺りが私の中での神曲です。新作が出るたびに神が増え続ける、凄まじいゲームです。 さて、これまた冒頭でお話しましたが、今回大きく取り上げた『塊魂』と『みんな大好き塊魂』はリマスター版が発売されており、映像が綺麗になったのはもちろんのこと、細かい仕様が変更され遊びやすくなった他、ロードが桁違いに速くなりました。 オリジナル版の『みんな大好き塊魂アンコール』のロード中は、王様が色々な言葉を口から吐き出してくれていたので、その姿を眺めつつ、ステージ開始の時を今か今かと待ちわびていたのですが、リマスター版でロードが速くなった結果、王様の文字吐きを楽しむ時間がほとんど無くなってしまいました。技術の進歩と時の流れを感じて感慨深い気持ちになると同時に、少しだけ寂しさも感じています。 また、『みんな大好き塊魂』のリマスター版『みんな大好き塊魂アンコール+王様プチメモリー』には、王様の幼少期の思い出を辿る、オリジナル版にはない新ステージが追加されました。 これらの新ステージはオマケという立ち位置ですが、闘魂を集めて対戦相手を倒すなどといった面白いルールが多く、しっかりと楽しめます。 シリーズの礎を築き、ゲーム史に燦然と輝く名作となった『塊魂』と『みんな大好き塊魂』。リマスター版の発売によりプレイのハードルが下がったこの機会に是非とも遊んでみてはいかがでしょうか。 それでは最後に、王様の名台詞、ありがたいお言葉を載せさせて頂きまして、今回の記事を締めたいと思います。 ゲームとかばっかしてないで、お外で遊びなよ
電ファミニコゲーマー:
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