草花の木彫作品で知られる須田悦弘の個展が渋谷区立松濤美術館で 初期作品や古美術品の「補作」、新作も公開
道端で見かけるような草花や雑草と見紛うほど精巧に彫られた木彫作品で知られる現代美術作家・須田悦弘。東京都内の美術館では25年ぶりとなる個展が、11月30日(土)から2025年2月2日(日)まで、渋谷区立松濤美術館で開催される。 【全ての画像】須田悦弘《スルメ》ほか広報用画像(全5枚) 1969年に山梨県で生まれ、多摩美術大学のグラフィックデザイン科で学んだ須田は、独学で木彫の技術を磨き、朴(ほお)の木を用いて様々な植物の彫刻を制作してきた。花弁や葉が繊細に再現された彫刻の見事さに加え、それらを思いがけない場所にそっと配し空間と作品を一体化させる手法では、観る者に深い印象をもたらしている。 今回の展覧会の見どころのひとつは、貴重な初期作が多数出品されること。学生時代に授業で彫ったスルメが木彫の世界に入るきっかけとなったが、同展では、この《スルメ》とともに初めて彫った植物の《チューリップ》が出品されるほか、大学の卒業制作が卒業後初めて再現展示される。さらに、当時、銀座の駐車場を借りて開催された2回目の個展で発表された《東京インスタレイシヨン》も登場する。 普段の制作ではドローイングや下絵は描かず、実物や写真を見て直に彫り出していく須田だが、同展では現代美術のコレクターの希望を受けて制作したドローイングも出品される。また、古美術の欠損部を補う「補作」にも取り組む須田は、2023年に現代美術作家・杉本博司が展覧会名を名づけた個展『補作と模作の模索』を開催。今回の展覧会では、その杉本の依頼で初めて手がけた鎌倉時代の神鹿像をはじめとする補作作品も展示される。実際に古美術品を手にとって観察し、研究した上で補われた作品は、須田の鋭い観察力と超絶的な技を堪能させてくれる。 松濤美術館は「哲学の建築家」と評される白井晟一(1905-1983)の設計によるもので、吹き抜けや螺旋階段など、独特の空間が特徴的だ。ここに須田が植物の作品を配することで、インスタレーション作品として展開することも見どころのひとつだ。須田は何度も館に足を運んで展示場所を決め、同展のために新作も制作した。空間内のどこにどのような作品が配されているのかと、作品を探し、空間を味わうことも、須田作品鑑賞の醍醐味である。会期中には、公開制作やアーティストトークも予定されている。ここでしか味わえない体験を求めて、ぜひ会場に足を運びたい。 <開催概要> 『須田悦弘』展 会期:2024年11月30日(土)~2025年2月2日(日) 会場:渋谷区立松濤美術館