京都は「もはや海外」! インバウンド&修学旅行生で“押しくらまんじゅう”状態の現実、混雑回避で観光客敬遠の動きも
「有名観光地は予定の見学ができない」
日本修学旅行協会によると、2023年度の修学旅行先全国調査で京都府は ・中学校:トップ ・高校:3位 に入っている。コロナ禍の一段落で再び注目が高まっているわけだが、児童や生徒を送り出す学校側の苦労は絶えない。頭を痛める原因のひとつが 「バスやタクシーの運転士不足」 だ。移動に利用する観光バスを京都府で手配できずに滋賀県や和歌山県など近県で確保するケースが珍しくない。旅行代理店大手の近畿日本ツーリストが今春、東京都の中学校の修学旅行で新大阪駅から奈良県へ向かうバスを手配できなかったが、同様の事例が京都でいつ起きても不思議でない。 班別で行動する体験学習では、貸し切りタクシーを利用することが多い。しかし、希望する台数を確保できず、多くの引率教員が電車や路線バスで別行動している。東京都の中学校引率教員は 「バスが満車続きでなかなか乗れず、集合時間に間に合わなかったことがある」 と頭をかいた。 物価上昇も頭が痛い。全国修学旅行研究協会の2023年度修学旅行実施状況調査によると、関東の茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉5県の国公立中学校が近畿地方へ2泊3日で向かう費用は2023年度、 「平均約6万9000円」 だが、前年度まで引き受けてくれた旅行会社に採算が合わないなどとして断られるケースがあるという。 京都から修学旅行先を他へ移す学校もある。北海道網走市の網走南ケ丘高校は2026年度から旅行先を台湾に切り替える。同校は 「狙いは国際交流の推進。京都の混雑が理由ではないが、混雑ぶりは承知している」 と説明した。全国修学旅行研究協会の調査に対し、関東地方の中学校教員から 「有名観光地は訪日客が多すぎて予定の見学ができない。旅行先を切り替えるかどうか迷っている」 という声が多数寄せられている。
修学旅行に変化の兆し
そんななか、修学旅行に変化の兆しがうかがえる。改訂された学習指導要領で探究的な学びが重視されたためだ。有名観光地を見学するだけでなく、班別で課題を決めた探究学習や農業や伝統文化の体験、民泊や農泊をスケジュールに組み込む修学旅行が増えている。 新潟県が県外からの修学旅行、愛媛県今治市が市内での宿泊や観光施設利用に助成金を出すなど、全国の地方自治体が修学旅行誘致に力を入れ始めたことも追い風になっている。京都市も2023年度から閑散期に宿泊する修学旅行生に舞妓(まいこ)の ・舞踏観覧 ・交流体験プログラム の無料提供を始めた。 民泊や農泊は地方の人口減少や高齢化で受け入れ世帯が減少するなど課題もあるが、日本修学旅行協会の高野満博事務局長は 「人手不足や物価上昇、オーバーツーリズムなどさまざまな要素が絡み合い、修学旅行が多様化に向けた変化の時期に入ったのではないか」 と見ている。京都市でも混雑が深刻なのは、東山区の清水寺、祇園、伏見区の伏見稲荷大社、右京区と西京区にまたがる嵐山、中京区と下京区にまたがる四条河原町など。それ以外だとある程度、ゆっくり観光でき、有名観光地でも朝早くなら人出が少ない。体験学習できる場所も西陣織や茶道、尼僧修行など盛りだくさんだ。 京都市観光MICE推進室は、 「観光地や公共交通の混雑は市民の暮らしにも影響を与えている。旅行の時期や時間、場所を変えて混雑を避けるよう修学旅行に限らず、観光客全般に協力をお願いしたい」 と呼び掛けている。修学旅行が変化の時代を迎えるなか、どうやって ・混雑緩和 ・京都ならではの修学旅行体験 を両立させるのか、定番の修学旅行先という立場に安閑としていられない難題が京都市に突きつけられている。
高田泰(フリージャーナリスト)