生活に身近な「特措法45条」 外出自粛要請、施設制限……何が変わるのか?
安倍晋三首相は7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発令した後の記者会見で、東京都の感染拡大状況を踏まえ、「このペースでは1か月後には8万人を超えることとなる」として、外出の自粛を強く求めた。東京都の小池百合子知事も、「国による宣言により、さらに強く外出の自粛を明確に後押しして下さる。その状況が整ったことを喜んでいる」と話した。都ではこれまでも週末や夜間の外出自粛を要請してきたが、「宣言」を受けて何が変わるのだろうか?
特措法の下では、政府が緊急事態宣言を出した後、指定された都道府県の知事にはさまざまな権限が与えられる。中でも第45条には、住民に対する外出自粛の要請(第1項)や学校、社会福祉施設、興行場(映画館や劇場など)、多くの人が利用する施設の使用制限の要請(第2項)など、市民生活に大きく関わる内容が記載されている。 6日に開かれた都の会見では、記者から「都はこれまでも2回週末に自粛要請してきた。(特措法の下でも)強制力がない中で、これからの外出自粛要請にどう実効性を持たせるのか」と第1項について質問が出た。小池知事は「今回の特措法をもって進めていくことで、私は国民のみなさんにも広く、また深くご理解いただけるものだと思っている」と答えたが、実効性の持たせ方について明確な回答はなかった。 同じ会見では、第2項も俎上にあげられた。この項では、施設の管理者や、そこを使うイベント主催者に対して使用や開催の制限や停止を「要請」することができる、と規定。さらに第3項では、要請に従わなかった場合に「指示」を出すことができる、と記している。第4項では「要請」「指示」を行った際にその旨を公表しなければならないとしている。 では、「指示」に従わなかった場合はどうなるのか。都の担当者は「現状それ以上の措置はございません」と答えた。
「変わらない」外出自粛要請、「事業者に重い」使用制限指示
第1項で人の移動に対しては「要請」を、第2項と第3項で施設の管理者やイベント主催者に「要請」と「指示」を出すことができる、と定めた第45条。しかし、「指示」による効果はあいまいだ。本当に実効性はないのか。また、なぜこのような立て付けなのか。行政学者の佐々木信夫・中央大名誉教授に聞いた。 Q:これまでの自粛要請と、「緊急事態宣言」後の自粛要請では何が変わりますか? 外出制限に関して、小池知事はこれまでも自粛を要請しています。法律が背後にあるのとないのとの違いはありませんが、いずれにしても強制力はありません。いくら若者が夜の街で騒いでいたとしても、警察に逮捕されるということもありません。特段、緊急事態宣言やそれに伴う措置を都が出したからといって状況が変わるとは思えません。 「理解してください」「協力してください」の範囲内でも日本人は従ってくれるだろうという性善説に立っているようにみえます。繰り返し「外出自粛」が叫ばれるとアナウンス効果はあるし、緩みを引き締める効果はあるのではないでしょうか。 また、憲法で認められている移動の自由を特措法でそこまで縛っていいのかという議論もあります。 Q:「要請」「指示」の強制力についてはいかがでしょうか? 第45条では、事業主は自分たちがやっている商売が感染源となっていると言われてしまうようなものです。「要請」「指示」の段階で事業所名がインターネット上に公開され、世の中にさらされるという効果はあります。罰則はないものの、公権力を背景とした指示は、事実上強制力を持つと考えられます。これらは事業者には重くのしかかるでしょう。事業者が、損失補償のイメージが膨らんで「それならいいか」と安心できる状況を作る必要があると思います。