『薬屋のひとりごと』壬氏役・大塚剛央のすごさはどこにある? 名場面で振り返る声の色気
壬氏に通ずる誠実キャラたち
恋愛小説的な甘い魅力がある一方で、壬氏は猫猫や周囲に対する誠実な側面を持っている。 第19話、気を失いかけた猫猫を必死に起こそうとする壬氏。猫猫を思うがゆえの悲壮な声には、大塚の代表作といえるキャラクターたちの面影が感じられた。 大塚が演じた代表的なキャラクターの一人が、大学駅伝を描いたアニメ『風が強く吹いている』の蔵原走。 走ることに真剣で、不器用ながらも周囲と思いを通わせていく蔵原の声には、猫猫に向かって叫ぶ壬氏にも通ずる必死さがあった。 なお、壬氏に似た大塚の担当キャラクターとしては、過去が重すぎるとして話題の人物『アイドルマスター SideM』の眉見鋭心にも言及したい。 眉見は文武両道の生徒会長からのアイドルデビュー、というハイスペック人物なのだがその過去が重く、エピソードが公開された際にはネットで大きな話題を呼んだほど。 正義を貫く誠実な面と重い過去を抱えた演じるのが難しい人物に、大塚は真っ直ぐな声をあてていた。 人には話せない秘密を抱えながら、後宮で宦官としてひっそりと生きる壬氏。彼のなかにある子どものような実直な心は、大塚だからこそ表現できたのではないだろうか。 『薬屋のひとりごと』において、王子キャラとしての絶対的な立ち位置を担う壬氏。壬氏の声には自分を完璧に見せようとする芝居気と隠しきれない誠実さがあり、テキストだけではわからない壬氏の性格を表していた。
三山てらこ