「▲時までに到着」「グルメをゲット」…ミッションクリア型旅ロケ番組隆盛のワケと気になる舞台裏
「以前は何かのミッションがあっても、『大成功!』となって終わらないといけないようなところはありましたが、今はどっちに転んでも面白ければいいと見られる時代です。 ガチ感は大事ですが、無理な押し付けや上下関係などでやらされている感が強いものはパワハラと思われることもある。 ルールをガチガチに固めて制限するよりも、お金がこれだけしか使えませんぐらいのシンプルでゆるい縛りの中で気ままに行ってもらう。ルールを増やすことである程度ルートが決まってしまうこともあります。余白があるほうが、今の時代に合った作りです」 ◆事前シミュレーションやアポ無し交渉はどうやっている? 気になるのは、たとえば電車やバスを1本乗り遅れたり、手頃な飲食店が見つからないなどある程度のアクシデントや不具合も想定したシミュレーションを事前にしているのかどうかだ。 「おおまかな時間の把握ぐらいはすると思いますが、ロケハンなどの際に、ここに何時何分、このお店に入って食事を注文して、滞在は何分以内、みたいな緻密なことまでは設定しないことが多いのではないでしょうか。 やっぱり、むしろそこからはみ出すことをしてもらったほうがいい。 お店が閉店時間になってたり、絶景が見られなくても、そういう『予定調和』は別撮り映像で出演者が直接触れていなくても満足してもらえますし、なんなら視聴者がそれぞれネットで確認することもできたりしますので、そこはそれほど重視するポイントではなくなってきました。 準備をしなくてもいいわけではありませんが、準備をし過ぎてつまらなくなってしまうこともあるので、状況によって次の展開を変えていく幅をもたせたものにするというのが今の作り方だと思います」 交通機関や商店街など、訪問エリア内で訪れる可能性があるなかで撮影許可が必要なところは言うまでもなく事前申請する。 キャスティングについては、予定不調和、どうなるか予測できないハラハラ感がより映えることから考えられることも多いという。 「本音で物を言うような人、行動や発想が自由な人をキャスティングすることが多いです。進行役がしっかりしたタイプで、ゲストにそういう自由なタイプを置いてやりとりのギャップを効果的に見せるパターンもあります」 「自由なタイプ」は、突然路地に入ったりするなど、制作サイドの想定を超えた動きをすることもあるが、 「それはもう全然OK、というよりも、むしろそのほうがいい、好きにやってほしいという部分もあります。 ただそれを、こちら側から『自由にやってください』と言うと逆に面白くならないことも多々あるので、想定から外れることもあるということそのものを想定し、起こったことに現場で対応していくというわけです」 もうひとつ気になること。アポ無しでの飛び込み交渉は、トラブルなどにつながらないのだろうか。 「事前のリサーチ段階で、『もしかしたらロケで行くかもしれません』と連絡をしていることもあります。 『いついつ行きます』ではなく『撮影で伺うことがあっても大丈夫ですか?』というニュアンスですね。保険の意味もかねて“うっすらアポを取っている状態”にしておくことはあります。 こういった直接交渉のスタイルが、お店側にも定着してきたことや、YouTubeなどで撮影され流されることも増え、撮影という行為へのアレルギーみたいなものは薄くなっていると思います」 予定不調和を楽しむ。この流れはまだまだ続きそうである。 取材・文:太田サトル ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。
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