家族を理解できない子供たち…SOS子どもの村で“住み込みの里親”が語る
「子どもの村」と「施設」の違い
「社会的養護」という言い方をします。保護者のない児童や、保護者が育てることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し保護していくのです。普通の里親は自宅に引き取りますが、「子どもの村福岡」は建物があって住み込みです。 松島さんは大学卒業後、京都にある住み込みの施設で9年間働きました。大きな施設でした。退職して福岡市に戻ってきた後、「SOS子どもの村」で育親を募集しているのを知り、応募したそうです。 神戸:前の施設と比べて、ここで暮らしていることの違いは? 松島:もう、全然違うと思います。やっぱり施設は集団生活になるし、多い時は60人いたので、施設の決まりごと、行事ごともたくさんありましたし、足並みを揃えるので、ちょっと苦しいなと思う時も。「こっちの方がいいのにな」と思いながらみんなに合わせていくみたいなこともあったりしたので。ここは本当に「生活」なので、育親の判断に最終的には委ねられるところがやりやすくもあり、責任の重さをかなり感じるところですね。 神戸:家族として暮らしていくわけですから、施設とは違いますね。 松島:そうですね。全く違うと思いますね。「育親の判断がちょっとまずいんじゃないかな」という時は、村長を始めスタッフが意見をしてくれるので、ワンクッションあって考えることもできますし、本当に環境としてはいいなと思う一方で、もちろんそういう助け、支えがあるという良さもあり……どの方々も皆そうと思うけど、生活をのぞかれるというか、プライベートであり、公でありっていう難しさはとてもあると思います。 神戸:休みは取れているんですか? 松島:一応「休養日」という形で、月に何回か出かけたりしていますけど、基本的には「家で休めるタイプ」なので。子供放ったらかして本を読んだりもするし、私が本を読んでいたら子供たちも本を読んだりですね。
「しんどい」が9割だが…
「村で子供を育てている」という意識なので、助けがあることは大きな特徴ですね。でも「生活をのぞかれる」という面はどうしてもあります。実際に暮らすというのはなかなか大変なようでした。 神戸:一定の業務を委託されて、個人事業主として契約をした形だと思うんですけど、仕事の面と生活の面とが融合してるような感じも受けるんですが。 松島:子供たちとの暮らしに関しては仕事という意識は全くないですが、法人の会議や研修があったりするので、そこはどちらかというと仕事っぽくは感じてはいますね。役割として。 神戸:もちろん楽しいことばかりじゃないですよね。 松島:全然楽しいことばかりじゃないです。昨日は、ちょっと悩んでいる一般の里親さんのところにお悩み相談に行ってきて、「里親って9割苦しい。1割楽しいって思っています」と言ったばかりなんです。9割はもうしんどいことばっかり! 思い通りにならないし、言うこと聞かんし、「ワー」ってなるし。でもたった1割の楽しさとか喜びというものを知ってしまうと、辞められない…というのが私の考えです。 一般の家庭と一緒だな、と思ったのですが、それを自分で選択して、子供たちと出会って、生活を作っていくのです。