イベントに集まりみんなで涼む 長野県などが「クールシェア」運動
7月に入り、気温30度を超す日が東京で続くなど暑い日が続いています。そんな中、涼しい場所をみんなで共有して省エネに――と「クールシェア」運動が自治体に広がり始めています。「1人1台」のエアコン利用ではなく、街や家庭の涼しい場所に集まって「涼」を分け合うことでエネルギーの効率的な活用を図ろうという試み。長野県では公共施設や店舗、企業などで複数回の利用者に景品を付けるなどの工夫で利用を進めています。
展覧会や文学館、映画館などが協力
涼しさを分け合う「信州クールシェア」運動6年目の長野県は今年も6月からクールシェアの場所となる「クールシェアスポット」と、講演会や展覧会などのイベントに集まることで涼しさを共有する「クールシェアイベント」の協力施設を6月から9月末まで募集。6月26日までに「スポット」で131件、「イベント」で27件の応募がありました。 昨年はスポットで239件、イベントで77件の応募があり、今年も梅雨明けの真夏に向けて応募が増える見込み。県は「今夏はスポットで250の応募を期待したい」としています。 期間中、8月31日までにスポットやイベントを利用してシールを3枚集めた人の中から抽選で景品をプレゼントする「シールラリー」も実施。ラリーへの参加者は一昨年の112人から昨年は177人へ増え、「今年もさらに認知度が上がって利用者が増えてほしい」と県は期待しています。 クールシェアに参加しているスポットは長野県信濃美術館(長野市)、上田市マルチメディア情報センター、堀辰雄文学記念館(軽井沢町)など公共施設のほか映画館、ゲーム施設、企業のショールームなどさまざま。「クールシェアを利用しに来た」と告げると信濃美術館では非売品の絵葉書を1枚、堀辰雄文学記念館はもみじを押し花にしたしおりをプレゼント。ながの東急百貨店はシールラリーのシールを提供します。
夏の日中のエアコン使用抑制目指す
クールシェアは特に夏の電力使用量がピークになる午後1時から午後4時までの省エネが狙い。この時間帯は家庭の電力使用量の半分以上をエアコンが使っているため「電力のピークカット」につなげたい(長野県)としています。 クールシェアは2012(平成24)年度に環境省が呼び掛けたのをきっかけに、現在は自治体・地域が取り組んでいます。環境省によると2014年度の場合、長野県をはじめ石川県、岩手県、岡山県、関西広域連合(滋賀、京都など11府県・市)、暑さで知られる熊谷市など12自治体、広域地域が実施。次第に広がりを見せています。 環境省によると、省エネ対策とするだけではなく「店舗や公共施設など涼しい場所に市民が集まることで人と人のつながりを深め、コミュニティーや街の活性化につながる力にもなる」としているのは熊谷市。同市では商工団体や環境団体、市民団体、自治会、PTA連合会などの賛同で街づくりにも向けた取り組みになっています。 同省によると夏の日中(午後2時ころ)の全世帯平均の消費電力は、6割近い58%がエアコンで占められ、次いで冷蔵庫(17%)、照明(6%)、テレビ(5%)などとなっています。野外や公共的な施設で涼しさを共有するだけでなく、家庭でもエアコンのある部屋に家族が集まって効率的に電力を使う工夫が期待されています。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説