連弾の魅力伝えるCD「アンコール~バッハから寅さんへ」 ドイツ在住夫妻が世界初録音
1台のピアノを2人で弾く連弾の小品集CD「アンコール~バッハから寅さんへ」がキングインターナショナルから発売された。バッハやヘンデル、モーツァルトの有名なメロディーから「荒城の月」、童謡「いぬのおまわりさん」、映画「男はつらいよ」のテーマまで、おなじみの旋律がピアノの華やかで楽しく、2人の演奏者ならではの立体的な音で再現された。ほとんどが世界初録音で、演奏したのはピアノ・デュオ・タカハシ/レーマン。高橋礼恵(46)は「連弾の面白さを知ってほしい」と話した。 ■ドイツ家庭で楽しむ連弾 高橋とビョルン・レーマン(51)夫妻はベルリン在住のピアニスト。2009年にデュオ活動を始めた。高橋は桐朋学園大を卒業し、レーマンとともにベルリン芸術大でクラウス・ヘルヴィヒ教授に師事した。2003年、シューベルト&現代音楽国際コンクール第1位など受賞多数。レーマンはベルリン芸術大教授で、高橋がアシスタントを務めている。デュオとしてはドイツのアウディーテ・レーベルからバッハ(レーガー編)「ブランデンブルク協奏曲」などのCDを出している。 高橋は「私も彼もソロや室内楽活動をしています。活動の真ん中にあるのがデュオ。ヘルヴィヒ先生もデュオの演奏をしており、コンサートなどでたくさんのレパートリーを知り、私も弾いてみたいと思いました。日本にいるときはデュオ活動にあまり目を向けませんでした。日本ではソロ活動ができないからデュオや室内楽をするという風潮がありました。こちらでは家庭で音楽に親しむために連弾をするという伝統があります。ドイツでは地元の人たちが気軽に来られる小さなコンサートが多く、そこでは連弾が求められます」と話す。 ■モーツァルトもシューベルトも 同じ4手のための作品でも2台ピアノでの演奏と連弾は違う。2台ピアノでは個々の奏者がソリスト的だ。高橋は2台ピアノでも演奏するが、会場に1台しかない場合も多い。 モーツァルト(1756~91年)は9歳のときに「4手のためのピアノソナタ」を作り、5つ上の姉ナンネルとチェンバロを連弾している絵が残されている。19世紀に入り、家庭で音楽を楽しむために有名なオーケストラ曲やオペラがピアノの連弾曲に編曲された。たくさんの連弾曲を残したのがシューベルト(1797~1828年)。音楽愛好家の友人らが個人の家で催した「シューベルティアーデ」という私的なコンサートでも連弾曲がよく演奏された。ピアノが家庭に入り、「ハウスムジーク(家庭音楽)」が生まれ、連弾が好まれた。