老舗銭湯、ファンの愛に支えられ再開 女将の骨折中に大改修 広島市安芸区
広島市安芸区矢野西の銭湯「日の出湯」。女将(おかみ)の秋田敏子さん(86)が骨折し、突然の休業を余儀なくされてから2カ月余り、浴室の塗装やタイルを改修して女将の帰りを待ち続けたファンがいる。銭湯を愛する「広島銭湯部」の池谷達也さん(35)=西区=たちだ。銭湯は11月中旬に再開を果たした。 【写真11】枚改修した浴場で話す池谷さん㊧と敏子さんなど 日の出湯は敏子さんが1966年、売りに出ていた銭湯を購入し、夫の故敏夫さんと開業した。燃料のまきがないとこぼせば、常連が廃材を探して持ってきてくれる。敏子さんは「地域あっての銭湯」とほほ笑む。 敏子さんが骨折したのは9月上旬。営業を終え、浴場を歩いていたときに転倒して意識を失った。親族に発見されたのは翌日午後3時。ちょうど営業の準備を始める時間だった。担架で救急車に乗り込みながら「釜に火を入れて営業しろ」と言い残してそのまま入院。左の大腿(だいたい)骨が折れていた。 6年前から通う池谷さんは敏子さんの入院を聞きつけて改修を提案した。「女将が帰って来たときにいい状態で再開できるようにしたかった」。同部メンバーと一緒に剝げた浴場の塗装を剝がして塗り直し、洗い場のタイルも張り直した。知人の塗装店も協力。敏子さんの親族も一緒に2週間作業を続けた。 同部は2016年に設立。部員は20人を超え、月に1回の銭湯巡りが主な活動だ。その傍ら、店主の高齢化などで減少が続く銭湯の姿を残したいと、ボランティアで営業の手伝いや清掃も担う。 予想を超えた仕上がりに驚いたという敏子さんは「常連さんのおかげで続けられる。ただそれだけです」とうなずく。11月18日に再開した店には「待ってたよ」と多くのファンが駆け付けた。リハビリを続けながら今日も敏子さんは番台に座る。池谷さんは「『また来たんか』と実家のように待っていてくれる女将さんに会いに行き続けます」とほほ笑む。
中国新聞社