「金がなければ逃げられない」犯罪組織の斡旋でアメリカへ…“中間層が中心”急増する中国からの不法移民
日本で観光してからアメリカに不法入国
一方、陝西省出身で、2月まで上海で働いていたという男性は、日本に1週間ほど滞在してから、メキシコ国内で「蛇頭」と接触して、このグループに加わったと話す。 手には成田空港のお店の袋を持った人の姿もあった。「テレビや学校で共産党が宣伝している日本と全然違ったよ」と話しかけて来る人もいた。 習近平国家主席についても聞いてみると「二百斤!」と、文化大革命時代に農村に習氏が送られた際に、200斤(100キロ)の穀物を背負って、担ぎ方も変えずに山道を5km歩き続けたと自慢したことを揶揄して、「嘘つきだ!」と批判していた。 ただ、習近平主席の悪口で盛り上がる人もいる一方で、一切私たちの方には近づかずに、顔を隠したまま、こちらを伺う人達もいた。声をかけてみたら、片言の日本語で「私は日本人です!」と叫ばれた。
急増する中国の不法移民にスパイへの懸念も
南部国境からの中国人の不法移民は、2023年10月から2024年3月までの半年間で2万4000人超となり、2021年度から50倍以上、2022年度から比べても10倍超と急増し、すでに前年を半年で上回った。 背景にはアメリカで中国人に対する留学ビザなどの規制が強化された影響で、一定数がビザを断念して不法入国に切り替えたとの見方もある。また、中国の政治体制や、経済状況に見切りを付けて、脱出する層が増えてきている証左かもしれない。 ただ、中国人不法移民を巡っては気になる事件も起きている。3月27日にはカリフォルニア州の海兵隊基地に、無許可で侵入した中国人の不法移民が逮捕されたのだ。 この事件の詳細はまだ明らかになっていないが、スパイ事案とも見られていて、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は記者会見で、「この事件を私たちは非常に深刻に受け止めている」とコメントしている。 アメリカメディアは近年100人以上の中国人が観光客などを装って、基地やその他の機密施設に侵入していて、スパイ行為に関連したものだったとのアメリカ政府関係者の証言も報じている。 さらには、「トランプ政権にもしなったら不法入国ができなくなる」として、急いで決断したとの声も聞かれた。 彼らは中国の将来に見切りを付けたのか。はたまたそれを利用して何かの使命を背負って来たのかは不明だ。11月の大統領選挙に向けて、中国に対してさらなるビザ要件の厳格化の声も議会などから挙がる中で、困難な道程であろうと国境に向かう中国人はさらに増え続けそうだ。 (FNNワシントン支局 中西孝介)
中西孝介