（写真：東奥日報社）

　衆院選比例代表東北ブロックの単独候補に青森県の前職・新人4人が名を連ねている。同ブロックは今回から定数が1減って12議席となり、激戦は必至。各党は一票でも多く獲得しようと県内や東北各地を駆け回っている。 　前回2021年は比例6議席を勝ち取った自民党。今回、前職・江渡聡徳候補（69）が名簿1位となり、陣営関係者は「良かった」と胸をなで下ろす。 　江渡氏は区割り変更に伴う候補者調整で、青森県1区の津島淳候補と、選挙のたびに比例と小選挙区を交代して戦ってきた。党本部は比例に回った青森県の候補を上位優遇してきた経緯がある。ただ、「当選確実」とされる単独1位を青森県が独占し続けることに、東北内では不満がくすぶっていた。 　特に今回から宮城、福島両県の小選挙区が1減し、候補者調整が必要に。今年に入って両県の県連幹部が水面下で有力議員に順位優遇を要請して回る動きもあり、江渡氏の陣営内では順位が1位でなくなるのでは－との懸念があった。 　結果的に、福島は派閥裏金事件に関連して現職の比例出馬がなくなり、宮城の新人は単独2位に。重複候補13人は3位に回った。ただ、事件の余波で比例の議席増は見込めず、小選挙区で苦戦している候補も多い中、「宮城の新人を優遇しすぎだ」とぼやく党関係者もいる。 　共産党は8期目を期す前職・高橋千鶴子候補（65）を名簿1位に登載した。この議席を死守すべく、東北で46万5千票、青森県で6万5千票と、それぞれ前回に約17万票、約2万票上積みする目標を掲げる。 　小選挙区での活動を比例の伸長につなげたい共産だが、青森県3区で候補擁立できなかったことが手痛い。3区は「共産の比例得票率が東北の市部で2番目の高さ」（畑中孝之県委員長）という弘前市が中心の重要な選挙区。19日には志位和夫議長が弘前入りし、「当落線上の大激戦。東北の宝を失うわけにいかない」と高橋氏の隣で頭を下げた。 　共産には、日本維新の会や参政党、れいわ新選組など他党の地方議員が増えつつあることが脅威に映る。高橋氏は「これまで投開票日の早い時間に『当確』が出てきたので危機感が共有されにくい。各県で情勢をしっかり認識してもらうよう相当努力している」と語った。 　国政初挑戦の新人2人は、地元出身の強みを生かして比例票を呼び込もうと奮闘する。ただ、投票用紙には政党名を書いてもらわなければならず、自身の名前を前面にアピールできないもどかしさもある。 　れいわ新選組は、19年知事選に出馬した佐原若子候補（70）を擁立。選対の担当者は「地元で地名度があるだけに戦い方が難しい」としつつ、党名を強調して連呼するしかない－と気持ちを切り替える。弘前市の自宅近くで県内第一声を上げた佐原氏は「『滅私奉公』でれいわの名前を売る」と声を張った。 　「私の名前は忘れても良いので参政党と記入を」。同党の山中泉候補（66）は古里・青森市での街頭演説で、笑いを誘いながらこう投票を呼びかけた。 　参政は県議と弘前市議を擁し、足掛かりとなる県内組織もある。青森県を重点地域の一つに位置付けるものの、山中氏は「党の知名度不足が課題。東北は他のブロックより厳しい」と吐露する。 　比例東北には9政党の計60人が立候補している。このうち単独候補は17人。