プロ囲碁棋士「ゼロ県」返上へ 県碁連、育成プロジェクト着手
本県は全国の中で唯一、プロの囲碁棋士がいない。日本棋院県支部連合会(県碁連、市川昭男会長)によると、過去も含めて「ゼロ」という。県碁連は天童市が将棋駒の生産量日本一や各種対局が温泉旅館で開かれるなど、将棋文化が深く浸透しているため「囲碁が埋没している」と嘆く。対策として「プロ棋士育成プロジェクト」を始める。将来性ある若手を選抜し、プロ棋士からじかに手ほどきを受ける講座などを想定している。 日本生産性本部(東京)のレジャー白書によると、2022年の囲碁人口は130万人と、将棋の460万人の3分の1にも満たない。減少割合も大きく、10年の610万人に比べて8割近く減少した。県碁連によると、本県も娯楽の多様化に伴って先細り傾向が続いている。対する将棋は藤井聡太七冠による空前のフィーバーを筆頭に人気が高まり、新たに始める人も増えつつある。 県碁連の佐藤博史事務局長(75)は仙台市出身の一力遼四冠が国際戦で優勝するなど隣の宮城県では囲碁熱が高いことに「温度差は歴然。このままプロ棋士『ゼロ県』が続くことだけは返上したい」と漏らす。
その返上に向けた一手となるのが同プロジェクトだ。プロ棋士になるには日本棋院などの試験をパスし「院生」と呼ばれる候補者になる必要がある。プロジェクトでは県碁連が主宰する子ども向け入門教室「レッツゴ」の受講生から将来性ある若手を選抜し、才能を伸ばす役割を担う。 具体的にはプロ棋士からじかに手ほどきを受けることなどを想定。引き受けてくれるプロ棋士との調整が付き次第、始めたい考えだ。先月30日には佐藤事務局長が山形市役所を訪れ、佐藤孝弘市長にプロジェクトへの支援を求める要望書を手渡した。 「駆け引きの奥深さが囲碁の魅力」と佐藤事務局長。今年100周年を迎えた日本棋院を念頭に「伝統文化を絶やさぬよう、難局を突破したい」と力を込めた。