我々モンゴル人は名ばかりが残るのだろう…中国経済発展で失った自然と信念
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚ましい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
心配なのは、人々の考え方の変化である。経済発展がいきなり進み、遊牧民のお金に関する感覚や伝統文化、自然に対する道徳なども歪んできた。宗教は文化大革命で完全に否定された過去があるため、現在は宗教的な縛りも弱くなって、心のより所も失っているように感じている。信念を失った人々は、ただ生きるためだけに、生きているように感じる。 その地域の土地、気候、自然環境にあった文化とは、長い年月をかけて育まれて、人々の生活様式も決まっていったと思う。モンゴル高原でも同様だ。貧弱な土地だからこそ、自然を大事にして、人間、家畜と自然のバランスと調和を大切にした遊牧文化が生まれ、何千年続いたのだ。 しかし、その文化と、その文化を育んだ自然・風土がわずか数十年間で、絶滅する危機に直面していると言っても決して過言ではない。 今のまま環境破壊や資源開発が続くと、草原は砂漠になる。そして、我々モンゴル人は伝統文化やアイデンティティを失い、名ばかりが残るのだろう。 ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第6回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。