【プレイバック’94】キングカズが本誌カメラマンを指さして『フライデーに気をつけろ』と忠告した日
10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は30年前の’94年5月6日号掲載の「カズが城にキツイ忠告『フライデーには気をつけろ』」をお届けする。 【秘蔵写真で振り返る】「城、気をつけろ!」キング・カズが指さした先には……! ‘93年の「ドーハの悲劇」を経たサッカー日本代表はファルカン監督を迎え、’98年に開催されるフランスW杯に向けて新たなスタートを切った。まだ創設されたばかりのJリーグの〝顔〟であり、代表でも中心的存在だったキング・カズこと三浦知良(当時27)と、期待の新星・城彰二(当時18)の当時の交流を伝える記事だ。(以下《 》内の記述は過去記事より引用) ◆レジェンドと次世代エースが合宿で同部屋になって… 新生ファルカン・ジャパンはオフト前監督の時代とは変わり、22人中半数以上が新しいメンバーだった。4月17日から始まった第一次合宿では選手もお互いを把握していない状態で大変だったようだ。 《ある選手が、ゴール前絶好の位置からのシュートを外した。すかさずカズが「イ、ハ、ラ~」と冷やかす。しかしよく見ると、それは井原正巳(当時26)ではなく遠藤昌浩(当時23、現在は遠藤雅大に改名)で あった。気づいたカズは大声で、 「なんだ~、遠藤かよ~」 冷やかしたつもりが逆に、赤っ恥をかいてしまったという次第。そんな基本の基本から出直さねばならないのだから、〝新生ニッポン〟もなかなか大変だ。》 そして、今回新たに加わった代表選手の中でも注目度No.1だったのが、開幕デビューから4戦連続ゴールを決めた城彰二だ。しかも、合宿ではカズと同部屋。カズはライバルともなる未来のスーパースターに対してあれこれとアドバイスを送っていたようだ。 《「カズさんには可愛がってもらってます。部屋にいるときは、いろいろと教えてくれますし、厳しい指摘もしてくれます。できるだけカズさんの近くにいて、サッカーに対する姿勢などを学びたいと思う」 と、カズに心酔の様子の城。アドバイスは技術面ばかりではない。これまでの城は報道陣に囲まれても、立ち止まって質問に答えようとはめったにしなかった。 それが一夜にして大変身。この日は控え室手前で足を止め、丁寧に受け答えする姿が見受けられた。それもどうやら、マスコミ操縦術を十分に心得る、カズ先生の「教え」によるもののようだ。》 そして極めつけの〝アドバイス〟が上の写真。カズは本誌カメラマンを指さすと、城に向かって噛んで含めるようにこう言ったのだ。 《こいつがフライデーのカメラマンだぞ。城、気をつけろよ(笑)》 もちろんこれはカズの本誌に対するリップサービス。実際、カズは各マスコミの記者・カメラマンの顔と会社名をすべて記憶していたようだ。記事では本誌カメラマンがカズとの思い出を語っている。 《「川崎の練習を撮りに行ったときも、わざわざ駆け戻ってきて、『フライデー、あっち行って』といわれたなあ」 昨年の日本代表のスペイン合宿でも、ランニング中のカズ・中山(雅史)コンビに、「おーい、フライデー」とぶつかってこられたこともあるという。もちろんそれは、 カズ一流の親愛(?)表現。その証拠に、 「あとで『仲良くやろうぜ』と握手を求められて感動した」》 他にも練習場に来てもすぐに控え室入りせずにグラウンドで記者と言葉を交わすなど、カズはスーパースターでありながらサービス精神に溢れていた。そんなカズから薫陶を受け、スーパースターへの道を歩み始めた城だった。 若手を多く起用してスタートしたファルカン・ジャパンだったが結果を出せず、秋のアジア大会でファルカン監督は解任される。この年、カズは当時「世界最高リーグ」と言われたイタリア・セリエAのジェノアへ移籍してアジア人初のセリエAプレイヤーとなった。’95年に帰国した後もJリーグや代表戦で活躍するが、フランスW杯本大会には直前のスイス合宿にまで参加していながら、出場メンバーに選ばれないという屈辱を味わう。そしてそれ以降もW杯出場の夢が叶うことはついになかった。 一方の城はカズと入れ替わるようにフランスW杯本戦でエースストライカーとして臨むも、得点は0、チームも3戦全敗という結果に終わってしまう。さらには「シュートを外したのにヘラヘラしている」などと〝戦犯〟扱いされて帰国時の成田・新東京国際空港でファンから水をかけられる事件もあった。 その後の城は’00年にスペイン1部リーグに日本人として初めて移籍するなどしたが、高校時代から抱えていた膝のケガが限界に達し、’06年に引退。カズは「俺より若い」と、城の引退を惜しんだという。 カズは57歳になった現在でも、ポルトガル2部リーグ・UDオリヴェイレンセに所属して現役を続けている。なかなか出場機会に恵まれないようだが、現役を辞める気はなさそうだ。今年の3月には『サンデーPUSHスポーツ』(日本テレビ)で、北沢豪のインタビューに応えて次のように語っていた。 「何歳までやりたいですかっていったら、ずっとやりたい。70(歳)でも80(歳)でもやりたい」 この記事のときと同じように、カズは今でもレジェンドであり続けている。
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