鴨川で楽しむ「朝床」「ジェラ床」…京都の納涼床に新風
京都・鴨川の夏の風物詩「納涼床」が、インバウンド(訪日外国人客)の増加に伴って多様化している。かつては料亭や旅館の桟敷席だったが、近年はジェラートが楽しめる「ジェラ床」、モーニングを味わう「朝床」も登場。京都の伝統文化を気軽に楽しめる場として人気を集める。(京都総局 相間美菜子) 【地図】納涼床のエリア
「非日常」
「鴨川に吹く風が心地よく、緑の多い景色もすばらしい。京都らしい雰囲気が味わえて最高です」 5月下旬、シンガポールから訪れた男性(47)は納涼床のテーブル席でジェラートを口に含み、笑みを浮かべた。 「BABBI ジェラテリア京都店」。コロナ禍が落ち着いた昨年以降、欧米やアジアからの外国人客が増え、今年は客の半数を占める。渋谷麻利店長(41)は、「宇治抹茶の味が人気です。川の上で涼むという非日常が外国人客にも受けているのでは」と話す。 京都鴨川納涼床協同組合によると、今年の納涼床は5~9月の期間中、先斗町や下木屋町など4エリアで約90軒が営業する。 約60年前は40~50軒が並び、料亭や高級旅館が営業する納涼床で、芸舞妓の接待を受けて京料理を味わうのが定番だったが、20年ほど前から、フランス料理を味わう「ビストロ床」や「カフェ床」が出てきた。 近年は、あぐらや正座に慣れていない外国人客らがくつろぎやすいテーブル席が増えているという。
昼営業を容認
営業時間にも変化が見られる。かつては夜の営業が主だったが、2021年にはコロナ禍による観光客の減少を受け、組合は期間中の昼営業を認めた。 昨年2月に出店したレストラン「Kacto(カクト)」は午前8時から営業し、パンケーキやハンバーガーを販売する。昼間の混雑を避けて早朝から京都市内を散策する外国人客の来店も多く、平日でも納涼床の約30席がいっぱいになることがある。 英語の研修を受けたスタッフが対応しており、広報の宮本唯さんは「朝から鴨川沿いでゆったりと過ごすぜいたくな時間が喜ばれています」と話している。 京都市観光協会によると、今年4月の総延べ宿泊者数に占める外国人比率は70・1%で、14年の統計開始以降で最高となった。米国や中国、オーストラリアからが多い。