【#佐藤優のシン世界地図探索㊶】もっと面白くなる安倍派パー券裏資金事件
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT OpenSourceINTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――安倍派の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件で、次々と自民党実力政治家とその秘書が検察特捜に呼び出されています。重大局面であります。 佐藤 何が重大局面かというと、元NHK記者で故・安倍元総理に近かった岩田明子さんが、「安倍さんがパー券のキックバックを止めさせた」と言っていましたよね? ――ABEMA TIMESの記事によると、岩田氏はこう発言しています。 「8年近く派閥を離れていたので、当初は目の前のことに追われていた。しかし2022年2月に"そういえばお金はどうなっているんだ?"とこの件に関して会計責任者を呼び出し、"このような方法は問題だ。ただちに直せ"と叱責した。 2022年4月に改めて"あの件は止めたんだろうな"と事務総長らにもクギを刺したところ、翌月以降の派閥パーティーでのキックバックはなくなった。安倍元総理は選挙を終えてから深掘りするつもりだったが、その2カ月後に亡くなってしまい、話がうやむやになった」 佐藤 それが決定的にヤバいんですよ。なぜなら「止めさせた」ということは、違法性認識を持っていたということだからです。だから止めたわけです。違法だと分かっていたということは、これはビンゴですよ。 ――確かに。 佐藤 だから、この発言は今回のひとつの鍵になるんですよ。 ――派閥の解体が一気に進んでしまうのですか? 佐藤 安倍派のほうはそうでしょうね。ただ、実はそんなにきつくないと思います。裏金の出どころは政治家が管理しています。だから、各政治家の問題になるわけです。 しかし、二階派はその金がどこに行ったか分かっていません。その貯め込んだ裏金を何に使っているか把握していないんです。だから、二階派のほうがきついはずです。 ――安倍派よりも二階派が炎上してしまう......。 佐藤 絶対にヤバいのは二階派ですね。派閥で大金をガメて、どこにいったか分からないんですから。しかも数千万単位。過去5年の累計では億単位になるでしょう。それがどこに行ったか分からないなんて、普通考えられないですよね。 ――はい。 佐藤 それから、もうひとつヤバいのは西村前経済大臣です。今回は呼ばれていませんが、不思議に思うのは、西村氏の疑惑で報じられているのは10万円の話ですよね? ――衆院選公示日に医療法人から10万円の寄付を受けましたが、西村前大臣は「道義的見地から返金した」と述べています。 佐藤 それはもっと大きなタマが隠れているからでしょうね。あの人はパーティーをやると言って、コロナで中止しました。