『進撃の巨人』人類最強の兵士・リヴァイは何を失ってきたのか 壮絶すぎる半生を振り返る
※本稿はアニメ『「進撃の巨人」The Final Season 完結編(前編)』までの内容に触れています。 【写真】 『進撃の巨人』完結編後編、場面写真(複数あり) 『進撃の巨人』に登場するキャラクターたちは、誰もが残酷な世界に生きる運命を強いられている。なかでもリヴァイは調査兵団の兵士長として、数えきれないほど多くの“大切なもの”を失ってきた。 そもそも調査兵団は、壁外の巨人に立ち向かっていく任務を担っているため、3つの兵団のなかでもっとも過酷な環境にある。その犠牲者の数も飛びぬけており、アニメ版の説明によると4年間で調査兵団の6割以上が死亡、初の壁外遠征で死亡する新兵は3割に及ぶという。 当然リヴァイは多くの部下たちを見送ってきたため、戦いの最中には何が起きても取り乱すことはない。しかしその胸の内に、熱い感情を押し殺していることを感じさせるシーンはいくつもある。 たとえばアニメ第10話では、死にゆく兵士の「俺は人類の役に立てたでしょうか?」という問いかけに対し、「お前は十分に活躍した」「お前の残した意志が俺に力を与える」と言いながら、巨人を絶滅させることを力強く宣言していた。 また、巨大樹の森で「女型の巨人」の捕獲作戦を行った際の出来事も印象的だ。リヴァイは腹心の部下たちを集めた「特別作戦班」を率いて作戦に臨む。しかしそのメンバーであるオルオ・ペトラ・エルド・グンタは、エレンを守るための戦いで全員が犠牲になってしまう。 とくにペトラはリヴァイを心から尊敬していた人物であり、逆にリヴァイからの信頼も厚かったものと思われる。「特別作戦班」が壊滅した現場に後から駆け付けたリヴァイは、ペトラの遺体のそばでしばらく佇み、暗い表情を浮かべていた。 さらにペトラとの別れは悲壮感に満ちている。彼女の遺体は当初壁内まで持ち帰られる予定だったが、移動中に巨人たちの襲撃を受け、遺体を捨てていくという残酷な決断を強いられる。そして壁内に戻った後も、ペトラの父に話しかけられ、ペトラがリヴァイにすべてを捧げるほどの覚悟を持っていたことを告げられるのだった。 実をいえばリヴァイは、生まれた時から過酷な境遇に置かれていた。地下街の娼婦・クシェルとその客の子どもとして生まれたが、幼少期の生活は困窮を極め、母は病で他界してしまう。その背景には、アッカーマン家に対する迫害も影響していた。 そんな極限状態で出会ったのが、クシェルの兄である“切り裂きケニー”ことケニー・アッカーマン。しかし彼は自分たちの血族に関する情報を一切伝えず、暴力で世界を生き抜く術を教えた後、「人の親にはなれない」という理由から、リヴァイを置いて地下街から立ち去っていく。 それから長い時が経ち、2人は再会を果たすものの、皮肉にも敵同士という関係性となっていた。ケニーが憲兵として、「始祖の巨人」の力をもつエレンの身柄を狙っていたからだ。熾烈な戦いの果てに、ロッド・レイスの巨人化に巻き込まれたケニーは瀕死状態に。そして命が燃え尽きる間際、自分を看取るリヴァイに対して、血族の真実を告げるのだった。 人間同士の争いのなかで、“育ての親”を目の前で失ったリヴァイ。さらにその後には、彼にとって最大の盟友である調査兵団13代目団長、エルヴィンとの別れも待ち受けていた。 ウォール・マリア奪還作戦にて、調査兵団はこれまでにないほど壊滅的な被害を受ける。そこでエルヴィンは、自分と新兵たちをオトリにすることで、「獣の巨人」を仕留めるという作戦を立案。結果として、その作戦に関わった兵士はほとんど全滅するが、エルヴィンは何の因果か瀕死で生き延びていた。 「獣の巨人」たちを退けた後、リヴァイは大きな決断を迫られる。目の前に瀕死のエルヴィンとアルミンが横たわっており、人を巨人化させる薬によって、どちらか1人の命だけを救えるという状況だ。 リヴァイは当初エルヴィンを蘇らせるつもりだったが、彼を“地獄”から解放するために、最終的にはアルミンに薬を打つことを選ぶ。そして他でもない自らの決断によって、エルヴィンと決別することになるのだった。 さらにその後は全世界を巻き込んだ「地鳴らし」の進行とともに、もう1人の盟友・ハンジとの別れも生じている。『「進撃の巨人」The Final Season 完結編(後編)』で、物語は完結を迎える予定だが、人類最強の兵士は最後に何を手に入れるのだろうか……。壮絶な運命の辿り着く先を見守りたい。
キットゥン希美