旧日出藩「襟江亭」の縮小模型を町歴史資料館に寄贈 県建築士会別府支部「建物の価値を知ってほしい」
大分県建築士会別府支部(籠田(こもりた)真一郎支部長)は、日出町大神に残る旧日出藩の御茶屋「襟江亭(きんこうてい)」の縮小模型を町歴史資料館に寄贈した。帆船の出航に適した風が吹くまでの待機所として使用され、「現存する同様の建物は他にない」と評されている。老朽化による倒壊が懸念される中、保存に向けた機運を高めようと作った。資料館で常時展示している。 同支部の椛田(かばた)康一さん(64)と幸孝文さん(64)が手がけた。主に厚紙を使用。実物の80分の1サイズで、縦80センチ、横100センチ。昨年12月に取りかかり、2カ月かけて完成させた。瓦や障子など細かい部分にもこだわり、丁寧に仕上げている。10月に贈った。 建物は海岸から約50メートル離れた場所にある。かつては道を挟んで海に面していた。 模型では建物の西側に小舟の船着場を設けており、「当時、藩主らは正面玄関からではなく、建物の横から出入りしていた」との可能性を提起している。 資料館の平井義人館長(69)によると、正面玄関は後から造られた形跡があるのに加え、藩主が建物前の道を横切って出入りしていたとするのは安全上の観点から考えにくいという。
制作時に支部長だった浅野健治さん(64)は「とにかくリアルに作ってほしいと要望した」と振り返る。椛田さんと幸さんは「模型を通じ、建物の価値を多くの人に知ってもらいたい」と述べた。 平井館長は「襟江亭は貴重な文化財であり、後世に残すための活動をする上でとてもありがたい。来館者に分かりやすく説明し、関心を一層喚起したい」と話した。 【襟江亭】 1667年に日出藩3代藩主の木下俊長の命で建てられた。「襟江」は大神漁港(通称深江港)の別名。参勤交代に出る際、待機所として利用した。熊本、森など他藩の大名や、幕府要人の応接にも使われ、迎賓館としての機能もあった。