[MOM4790]国見DF野尻慎之助(3年)_“マジで”持っている「進撃の右サイドバック」が弾丸ミドルで劇的決勝弾!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [7.28 インターハイ2回戦 国見高 2-1 山梨学院高 アロハフィールド] 【動画】広瀬すずさんが日本代表ユニ姿で見事なヘディング「可愛すぎる」「さすがの動き」 いろいろ考えている時間なんてなかった。後半のアディショナルタイム。おあつらえ向きのボールが、目の前にこぼれてくる。イメージはずっと前から膨らませていた。ゴールを挙げるところも、そのままチームメイトたちと喜んで、カメラにポーズを決めるところも。 「自分でもビックリなんですけど、少しは練習もしていましたし、ああいうのをいつも狙っていたので、良い形でゴールができて良かったと思います。これはマジで、持っていましたね(笑)」。 国見高(長崎)の背番号2を付けた『進撃の右サイドバック』が、ミドルレンジから撃ち抜いたスーペルゴラッソ。DF野尻慎之助(3年=カティオーラフットボールクラブU-15出身)は、間違いなく“マジで”持っていた。 「すぐ先制できて、メッチャ良い入りができましたし、結構ボールを持てて、相手コートで“国見らしいサッカー”ができていたと思います」。野尻もそう話したように、前半は上々の展開だった。国見にとっては初戦となる2回戦。山梨学院高(山梨)と対峙した一戦は、前半16分にMF門崎健一(3年)のゴールで先制。以降も丁寧なパスワークから何度もフィニッシュを取り切るなど、好リズムで最初の35分間を終える。 だが、後半に入って6分に追い付かれると、そこからは選手交代でギアチェンジを図った山梨学院が攻勢を強め、国見は守備に回る時間が長くなったものの、野尻は「相手に1点は行かれましたけど、『誰かが1点獲るだろうな』という感じでみんなやっていたと思いますし、焦ってはいなかったです」と劣勢の時間帯を振り返る。 1-1で迎えた後半アディショナルタイム。35+2分に国見はCKを獲得したが、そもそもその位置にいたのは、偶然が重なった結果だったという。「あの時、相手の1人はズボンが破れて外に出ていて10人になっていて、普段のコーナーキックの時は僕が一番後ろなんですけど、全部1個前に出して、僕がこぼれの位置に入っていたんです」。 門崎が右から丁寧なキックを蹴り込むと、野尻の視界にはこぼれてきたボールと、その先にあるゴールが飛び込んでくる。「『こぼれが来たら、もう打とう』と思っていて、ちょうど打つ時にコースが見えていたので、ふかさないように、上体を下に向けて押さえ込む感じで振り切ったら、入っちゃいました(笑)」。 ペナルティエリアの外から打ち切ったミドルは、一切迷いのない軌道でゴールネットを撃ち抜く。土壇場も土壇場で叩き出した決勝点。ピッチサイドへと全速力で駆け出した野尻を、興奮気味にチームメイトたちが出迎える。ひとしきり喜んだ後にカメラへ向かって取ったのは、いわゆる『進撃ポーズ』。右サイドバックが披露した渾身の一振りが、国見の初戦突破を堂々と手繰り寄せた。 「練習でも決めていて、ああいうのは結構得意と言えば得意ですね」。そう笑ったスコアラーの言葉に、キャプテンのGK松本優星(3年)も同調する。「後ろから見ていて鳥肌が立ちました。結構ああいうのを持っているんですけど、ビックリしましたね。良いコースに行ったので、後ろから見ていても気持ちが良かったです」。 チームを率いる木藤健太監督も、やはりまったくの予想外ではなかったことを、笑顔で明かしてくれた。「同じサイドバックでも、アレは僕レベルでは打てないシュートです(笑)。たまにしっかりミートしたキックがバチンと当たって、ああいうふうに入るゴールは何回か練習の時に見たこともあったので、そういう意味では大事な勝敗を左右する中で、あのゴールが生まれたのは、彼の日頃の積み重ねだと思います。ただ、ビックリしました」。みんなビックリはしながらも、どこかで野尻が秘めた“一発”に期待していたようだ。 中学時代は大分の名門クラブ、カティオーラフットボールクラブでプレー。「もともとは県内の高校に行く予定だったんですけど、国見から声が掛かって、これから強くなるという話も聞いていましたし、環境的にもサッカーに集中できるなと、ここで頑張って本気でプロを目指したいなと思って、国見に来ました」と伝統校の門を叩いた。 2年生だった昨年度のインターハイでは、20人の登録メンバー入りを果たし、1回戦と3回戦には終盤に途中出場。準決勝でもチームメイトの負傷退場を受け、開始5分からピッチへと登場したものの、チームはその試合で敗退。自身のパフォーマンスにも納得は行っていなかった。 「メンバーには入っていましたけど、スタメンではなかったですし、正直最後の5分の出場とかが多かった中で、準決勝は最初の方にチームメイトのケガがあって、すぐ試合に出たので、急遽サイドハーフをやっていたんですけど、そこでも思ったより自分が出せなくて、悔しい大会でした」。 だからこそ、高校最後のインターハイには確かな決意を持って挑んでいる。「自分たちはインターハイも優勝を狙っているので、一戦一戦自分たちのサッカーをやって、絶対に勝って、最高の夏にしたいです」。すがすがしい笑顔に纏ってきた手応えが透けて見える。 最後に聞いてみた。「また同じようなシチュエーションが来たら、シュートを打ちますか?」。すぐに答えが返ってくる。「自信が付いたので、打ちます」。 ポジティブな自信を携え始めた『進撃の右サイドバック』。“マジで”持っている野尻慎之助の前に再びボールがこぼれたら、相手チームのゴールキーパーは、その強烈過ぎるシュートにご注意を。 (取材・文 土屋雅史)
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