本当に効果的な360度フィードバックとは 【原文】Let’s do a 180 on 360s
リーダーシップ開発における360度フィードバックは、フィードバックを受けたリーダー本人の自己擁護や防衛の引き金となり、かえって逆効果となることがある。したがって、リーダー自身のオープンで探究的なマインドを引き出すことがより良いアプローチだ。
はじめに
組織では、従業員やリーダーシップの開発、業績評価、組織の成長を目的として、360度フィードバックとしてよく知られている多角的フィードバックアセスメントが頻繁に実施されている。コーチングにおいて最も広く実施されているフィードバックアセスメントでは、まずクライアントが一連のコンピテンシーに関する自己評価を行う、そして、クライアントは、上司、部下、同僚にも同じアセスメントを依頼し、これにより360度の視点を得る、その後、クライアントは匿名のフィードバック・レポートを受け取り、コーチと一緒にそれを読み解いていくというものだ。 2011年にJournal of Applied Behavioral Science誌に掲載された著名なな論文の中で、テイラーとブライト(デビッド・ブライトは、人間中心のリーダーシップ研究プログラムを率いる米国コーチング研究所の新しいシニア・サイエンティストである)は、一般的に行われている匿名のフィードバックアセスメントは、組織開発の実践に根ざしていた本来の目標のうち、いくつかの目標を達成するうえでは適さないと説明している。テイラーとブライトによれば、組織開発は、協調的な関係を構築する人間中心のアプローチを重視し、クライアントが他者の視点を通して自分自身と自分が組織に与える影響についてより深く認識することを目指している。それは、自分自身と組織のパフォーマンスを向上させるための新たな行動をとることに向けられているのである。しかし、匿名のフィードバックアセスメントは、クライアントを組織基準に従って行動させるといった、人事側のニーズを満たすことに重点を置いていることが多い。 そのアプローチは、クライアントが他者の視点に心を閉ざし、それを否定するような防衛的な態度を誘発する可能性が高く、クライアントの成長を前進させるのではなく後退させてしまう可能性もある。実際、否定的なフィードバックを受けて防衛的になった人のパフォーマンスは、次の評価サイクルで悪化することがわかっている。テイラーとブライトは、真の変化と成長は、オープンマインドの状態をつくり出すことによって可能になると主張している。 では、オープンマインドの定義とは何だろうか?著者によると 「オープンマインドとは、(a)他者からの肯定的・否定的なフィードバックを吸収し評価しようとする受け手の意欲、(b)新しい情報に照らして自分の認識を変えようとする受け手の意欲、を指す。オープンマインドとは、自己変革を含む変化の可能性に価値を置く状態である。フィードバックに対してオープンマインドであるとき、人は、自分が当たり前だと思っている前提を見直すことができる。」 彼らはさらにこう書いている。「フィードバックアセスメントを実施する際は、オープンマインドでいることが、異なる視点を受け入れ、考えを統合し、フィードバックを提供した人たちとの関係における自己認識を深める能力につながる」 テイラーとブライトは、フィードバックアセスメント方法論を評価する概念モデルを確立した後、それが防御的な態度を引き出すのか、それともオープンマインドな態度を引き出すのかを評価するために、そのモデルを使って、2つのフィードバックアセスメント戦略を評価している。1つは広く使われている「自己と他者の比較」であり、もう1つは彼らが提案する「予測と他者の比較」だ。フィードバックアセスメントは最終的には広い意味で自己認識に関わることであるため、彼らはそれぞれの戦略の基礎となる自己の概念についても探究している。