『アンチヒーロー』『Destiny』『JKと六法全書』『虎に翼』 リーガル作品が求められる理由
『JKと六法全書』『虎に翼』
金曜ナイトドラマ(テレビ朝日系金曜23時15分~放送)で放送されている『JKと六法全書』は、現役女子高生弁護士の桜木みやび(幸澤沙良)が学校や法廷で旋風を巻き起こしていくリーガルドラマだ。 女子高生弁護士と言うと突飛な設定に聞こえるが、弁護士資格に年齢制限はなく、最近では高校在学中に司法試験に合格した16歳がいるというニュースも話題になっていた。 年齢、性別を問わず弁護士への道は万人に開かれているという前提があるからこそ、本作の企画も実現したと思われるが、日本初の女性弁護士が誕生したのは昭和13年(1938年)。昭和8年(1933年)に法改正されるまで、女性が司法試験を受けることはできなかった。 そんな時代に日本人女性として初めて弁護士、裁判官、裁判所長を務めた三淵嘉子を題材にしたオリジナルドラマがNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『虎に翼』である。 主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)が最終的に裁判員長を務めると思われることを踏まえると、法曹三者で言うと裁判官の立場から描かれるリーガルドラマとなりそうな本作だが、現在は寅子が明律大学女子部法課に進学し、法律について学ぶ姿が描かれている。寅子が傍聴した裁判や法廷ドラマとして演じた「毒饅頭殺人事件」にはモデルとなった裁判が存在し、その事件について寅子たちが議論を交わす姿を通して法律について学ぶことができるのが本作の面白さだ。そして、それと同時に描かれるのが、男尊女卑が蔓延する日本社会に戦いを挑む女性たちの姿でフェミニズム思想を前面に打ち出した朝ドラだと話題になっている。 劇中では力では男に勝つことができない女たちにとって法律は身を守るための盾であり、唯一の武器だということが語られるが、今回紹介した四作のリーガルドラマのうち、3作の主人公が女性だったのは、ある種の必然だったのだろう。 法律は弱者が権力と戦う武器であり、理不尽な暴力から身を守る盾であることをリーガルドラマは教えてくれる。だからこそ、多くの視聴者に支持されるのだ。
成馬零一