空の景色を一変させるはずだった、しかし実現しなかった幻の建築物
（ＣＮＮ） 別の時間軸では、ニューヨーク証券取引所はマヤ神殿のような形状のタワー内にあり、パリのポンピドゥー・センターは高さ約１０４メートルの真っ白な卵のようにそびえ立っていたかもしれない。 【画像】ノルウェーでは新たな教会を建設するための資金調達を長年にわたり行ったものの、十分な資金が集まらなかった 建築プロジェクトが建設されるたびに、他の多くのプロジェクトは忘れ去られ、それらはスケッチや完成予想図の中に、あったかもしれないものとして存在するだけだ。実現されなかった建築物の多くは、世界的に有名な建築家によるものだが、書籍「Ｔｈｅ Ａｔｌａｓ ｏｆ Ｎｅｖｅｒ Ｂｕｉｌｔ Ａｒｃｈｉｔｅｃｔｕｒｅ」では、５０００もの作品の中から約３５０のプロジェクトを厳選して紹介している。 著者のサム・ルベル氏とグレッグ・ゴールディン氏は序文で、未完成のデザインは「純粋で混じりけのないビジョン」だと述べている。「それらは市場や政治的な事情によって余儀なくされる修正や削減を免れてきた。悲しいことに、これらはしばしば鮮やかなイメージを鈍った現実へと塗り替えてしまう」 １９７０年代に隆盛したユートピア・デザインのように、極めて未来的な世界を描いたビジョンの多くは、あまりにも理想主義的だとして実現には至らなかった。世界金融市場の波乱が計画を飲み込んだものもある。例えば、イラク系英国人建築家のザハ・ハディド氏がデザインした１億ドル（現在のレートで約１４２億円）規模のアラブ首長国連邦（ＵＡＥ）ドバイ・オペラハウスは、金融危機のあおりを受けて計画が頓挫した。 また、ハリケーン「カトリーナ」の後、新たな文化的象徴となるはずだったニューオーリンズ・ナショナル・ジャズセンターや、ノルウェーのオーレスンに建てられるはずだった高山を模したコンクリート構造の教会など、単に資金を確保できなかったプロジェクトもある。 建築家や開発者が亡くなったために、プロジェクトが消滅した事例もある。ポーランド人建築家のマチェイ・ノビッキ氏は、５０年に飛行機事故に遭わなければ、インド北部のチャンディーガル都市計画を指揮していたはずだった。同氏に代わり、スイス系フランス人建築家ル・コルビュジエ氏が計画を引き継いだ。ケニアでは、建築家ダニエル・リベスキンド氏による先史時代へのオマージュとして「ンガレン：人類博物館」が計画されていた。プロジェクトの創設者である古人類学者のリチャード・リーキー氏が２０２２年に亡くならなければ、グレートリフトバレーに建設されていただろう。（その後、建物予定地は変更されたが、リベスキンド氏のデザインは移転先には適さなかった） その形状や名称を理由にネット上で批判を浴びた建築プロジェクトも数多くある。１１年、オランダ・ロッテルダム拠点の建築家集団ＭＶＲＤＶは、韓国で計画していた高級複合施設「ザ・クラウド」について謝罪した。綿雲のような形のフロアが間を隔てる２本の直線的なタワーが、０１年９月１１日の米同時多発テロ事件によって煙に飲み込まれた世界貿易センターのように見えると批判され、計画は中止された。 ◇ 原文タイトル：These buildings would have transformed skylines, but they were never built（抄訳）
