センバツ2021 神戸国際大付の春 苦しくても粘り強く /兵庫
第93回選抜高校野球大会に出場した神戸国際大付は北海(北海道)との熱戦を3-2で勝利し、2回戦は仙台育英(宮城)に5-13で敗れた。粘り強く戦ったナインは「夏に必ず戻ってくる」と雪辱を誓う。記者(26)が熱戦を振り返る。【中田敦子】 北海との1回戦は延長までもつれ込んだ。2-2で迎えた十回裏、1死満塁で、関悠人選手が左打席へ。2球目、真ん中低めのストレートを思い切り振り抜いた。強い打球が、飛び込んだセカンドの横を抜けていった。応援団の太鼓の音が響き渡り、青色のジャンパーとオレンジ色のメガホンが揺れた。サヨナラヒット。代走で途中出場していた関選手が試合を決めた。 ヒーローとなった関選手は、センバツ前の練習試合で結果を残せず、見逃し三振など消極的なプレーが目立った。表情も暗く、凡退した打席ではよく下を向いていた。「チームに迷惑をかけてばかり」と悩みをこぼす日もあった。 だが、この日、球場のスクリーンには、スタメンから外れていた殊勲者の笑顔が映し出された。間近で見ていた選手の成長に感動し、私は思わず泣いてしまった。 劇的なサヨナラ勝ちをしたチームだったが、最速145キロのエース右腕・阪上翔也投手は悔しさが残った。 秋の県大会後に右肘を痛め、取材にも「正直投げづらい」とこぼしていたが、理学療法士の治療もあって回復。肘に負担のかからないフォームに変えた。「チームの期待に応えたい」と甲子園のマウンドに上がった。 先発し、一回に3三振を奪ったが、二回はストレートが120キロ台に落ち、1点を奪われ満塁とされた場面で交代。2回戦の仙台育英戦でも先発を任されたが、コントロールが定まらず、二回途中4失点で降板した。試合後、「肘は気にならなかった。エースとして投げさせてもらったのに申し訳ない」と話した。 2回戦は序盤から大量得点を許し、5―13で敗れた。新チームとなった直後は、ミスが出ると下を向く消極的な部分があったが、坂本陽飛選手のタイムリーなどで1点ずつ返し、主将の西川侑志捕手は盗塁を3回刺した。苦しい展開でも前を向き、粘り強く戦う姿を見せた。 試合翌日の3月26日、チームは早速グラウンドで練習を再開した。西川主将は「春、夏の大会では序盤から得点するチームを作る。もう一度甲子園に戻ってきたい」と力を込めた。74球でセンバツを終えた阪上投手も「エースとして、全試合自分が投げて勝ち進んでいきたい。投げても打ってもチームを引っ張る」と話し、背番号「1」を背負い続ける意気込みだ。 2カ月にわたるセンバツ取材は幕を閉じた。入社前は野球のルールも分からず、最後までやり遂げられるか不安だった。それでも、ひたむきに野球に打ち込む選手を見て、次第に取材に力が入っていった。大勢の生徒、保護者らが応援に駆けつけ、チームカラーの青色に染まったスタンドの熱狂を感じた。強豪校がしのぎを削る夏の大会でも、熱戦の模様を伝えていきたい。 〔神戸版〕