ミサイル発射、核施設公開…北朝鮮、米大統領選挙前に相次いで武力示威
10月、「韓国敵対国規定」の憲法化を予告
鴨緑江(アムノッカン)流域の水害復旧に力を入れていた北朝鮮が、今月に入って軍事的緊張を急速に引き上げている。米大統領選挙(11月5日)、ロシアとウクライナの戦争、南北関係など急変する情勢環境を念頭に置いた動きだ。 北朝鮮は18日早朝、平安南道价川(ケチョン)一帯から東北方向に短距離弾道ミサイル数発を発射した。韓国の合同参謀本部はこのミサイルの飛行距離が約400キロメートルで、正確な軌道を韓米が精密分析していると発表した。北朝鮮はこの6日前の12日には短距離弾道ミサイル(北朝鮮側の発表は「600ミリ放射砲」)数発を発射しており、5日前の13日には、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長がウラン濃縮施設を訪れ「戦術核兵器の作成に必要な核物質の生産において、より高い目標を掲げ、総力を集中せよ」と指示したという北朝鮮官営「労働新聞」の報道があった。 特に注目されるのは、金正恩総書記のウラン濃縮施設の初訪問だ。米大統領選挙を狙った「存在感の誇示」とみられるこの訪問で、金総書記は「核物質生産に総力を集中せよ」と指示した。金総書記は9日の「朝鮮民主主義人民共和国創建76周年」記念演説では、「核を保有した敵国に対応する核の力量を強化していく」とし、「強力な力が真の平和であり、国家発展の絶対的な担保」だと強調した。 「労働新聞」は金総書記の核施設訪問を取り上げた13日付の記事で、人民軍特殊作戦武力訓練基地の現地指導▽新型600ミリ放射砲車の発射実験への視察を合わせて報道した。9・9節(政権樹立記念日)の演説前日には、金総書記の海軍基地建設▽船舶指導事業▽第2経済委員会傘下の国防工業企業所などの現地指導に関する記事を掲載した。韓米日が神経を尖らせるような軍事行動を立て続けに行ったわけだ。 13日には金総書記が平壌(ピョンヤン)を訪れたロシアのセルゲイ・ショイグ国家安保会議書記と面会し、「地域・国際情勢に対する幅広い意見交換」の末、「満足できる見解の一致」を見たと、「労働新聞」が報じた。3日後の16日にはチェ・ソンヒ外相が「第4次ユーラシア女性連団(フォーラム)と第1回BRICS女性連団」に出席するため、ロシアに向けて出発した。ショイグ書記は北朝鮮だけでなくイランとシリアも訪問したが、戦争拡大の兆しを見せる「ロシアとウクライナ戦争」対応策の模索と関連があるものとみられる。12日に600ミリ放射砲、18日に短距離弾道ミサイルを発射したことは、これを念頭に置いた可能性がある。秋夕(チュソク・旧暦8月15日の節句)連休期間の14~16日には「汚物風船」を韓国に向かって飛ばした。今年5月下旬に始まった「対北朝鮮ビラ対汚物風船」の悪循環がが続いている。 10月には重要な政治日程も目白押しだ。北朝鮮当局は10月7日、最高人民会議第14期第11回会議を開き、「社会主義憲法修正補充(改正)問題」について議論すると、16日に発表した。金総書記が昨年12月末、労働党中央委第8期第9回全員会議で「南北関係は敵対的な二国間関係、戦争中の二つの交戦国の関係」だと宣言し、今年1月15日の最高人民会議第14期第10回会議で「『統一』、『和解』、『同族』という概念そのものを憲法から完全に取り除くべきだ」と提案したことに伴う後続措置だ。今回の最高人民会議では、南北関係を「民族関係」ではなく「国家関係」として扱う北朝鮮側の新たな認識が憲法に明文化されるものと予想される。 イ・ジェフン先任記者、シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )