ドネアが6回KO勝利でWBSS決勝進出!「井上尚弥と対戦できれば素晴らしい」
プロボクシングのWBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)バンタム級準決勝が27日(日本時間28日)、米国ルイジアナで行われ5階級制覇王者で現WBA世界バンタム級スーパー王者のノニト・ドネア(36、フィリピン)が同級5位のステフォン・ヤング(30、米国)を6回2分45秒、左フック一発でキャンバスに沈めてKO勝利。決勝進出を決めた。もう1試合の準決勝は、5月18日に英国グラスゴーでWBA世界同級レギュラー王者、井上尚弥(26、大橋)とIBF世界同級王者、エマヌエル・ロドリゲス(26、プエルトリコ)で争われるがドネアは井上との対戦を熱望した。 36歳になっても“伝家の宝刀”の威力は健在だった。6ラウンドの終了間際。ボディに気をとらせたドネアがヤングのノーガードとなった顔面にブンっと音がするような左フックを一閃。ヤングはドタっと仰向けに倒れ、大の字になったままピクリとも動かない。レフェリーは、カウントをせずにKOを宣言した。 「グレートな試合だった。いいファイトプランで臨み、いい結果となった」 リング上でドネアも興奮気味だった。 序盤は苦しんだ。 試合直前にWBO同級王者のゾラニ・テテ(南アフリカ)が右肩の怪我で出場を辞退、急遽、相手がアンダーカードに出場予定だった18勝(7KO)1敗3分の戦績を持つヤングに変わった。テテと同じくサウスポーだが、タイプはまったく違った。上背がなく左右にちょこまかと動き、左右のカウンターを合わせてくる。的を絞れず非常にやり辛い相手に序盤はプレッシャーはかけてもつかまえることでできなかった。手数が減りボクシングが雑になったため2ラウンドにはヤングの“逆ワンツー”を浴びた。 4ラウンドは、ショートパンチの連打でロープにつめ、5ラウンドは、強弱をうまく使って右アッパーをねじ込みながら、徐々にペースを作りつつあったが、全盛期のドネアのキレやスピードには程遠く勝負を決めた6ラウンドも前半は左のカウンターに苦しむ展開だった。 「ステフォンはうまかった。ストレートをがんがん打ってくるし手ごわかった。1、2ラウンドはプレッシャーをかけたが反撃してきたしね。多少ダメージも受けたよ。それでも彼が武器にしている右を受けながら対応することを考えチャンスを待っていたんだ。最後はいいタイミングで打ち込めた。それで勝てたんだ」 右目の下が赤く腫れていた。 ヤングの右の打ち終わりに数々のKOシーンを生み出してきた左フックを狙っていた。最後は、パンチの打ち終わりではなかったが、下を意識させておいて、ガラ空きになったところへ左フックを打ち込む頭脳的なボクシングで試合を終わらせた。 昨年の11月に行われた1回戦は無敗のライアン・バーネット(英国)が腰を痛め棄権するという不完全な形でタイトルを奪取し準決勝進出を決めていた。今回も相手が変わるアクシデントで難敵のテテと戦うことなく決勝進出を決めた。これで生涯キャリアは45戦40勝(25KO)5敗。ドネアは“勝負師”に不可欠な“運”を持っている。 これで来月、グラスゴーでロドリゲスと準決勝を戦う井上が、その最大のライバルを倒せば決勝の相手はドネアになった。さすがに衰えは隠せないが、ボクシング界のレジェンドであり、今なお“一発の怖さ”を秘めたビッグネームである。 リング上のインタビューで「もし戦うのならば井上か、ロドリゲスか、どちらとの戦いを希望するか?」と質問されると、ドネアは、こう答えた。 「どちらも凄いボクサーだ。でも、私は日本が大好き。尚弥のことをリスペクトしている。もし尚弥と対戦できれば素晴らしいね」 プライベートで、度々、日本を訪れる大の親日家でもあるドネアは井上との対戦を熱望した。5年前には大橋ジムを表敬訪問して井上に技術指導を行ったこともある。 井上にとってもドネアとの決勝でのWBAのベルト統一戦は望むところだろう。ドネアを相手にインパクトのある勝ち方をすれば、今以上に井上の知名度も、そのマーケット価値も世界的なものとなる。だが、その前に……。初めて足を踏み入れる異国の地での“ロドリゲス退治”が待っている。