「自分を鍛えるために」漫画家・楳図かずおさんが貫いた一つのルール「ホラー漫画の第一人者」88歳死去
「漂流教室」や「まことちゃん」などで知られ、ホラーやギャグ漫画の新たな世界を切り開いた漫画家の楳図かずお(うめず・かずお、本名・一雄=かずお)さんが10月28日、東京都内のホスピスで死去した。88歳だった。関係者によると胃がんを患っており、療養中だった。葬儀は関係者で執り行われた。 * * * 「ホラー漫画の第一人者」として知られる楳図さんだが、漫画に興味を持ったきっかけは、“漫画の神様”手塚治虫さんの冒険物語「新宝島」。さらに、デビュー当初は少女漫画を描いてたが、子供の頃の思い出が「恐怖路線」へと導いた。 漫画家を本格的に職業としていくことを考えた時に思い出したのが、地元・奈良県に伝わる民話「へび女」の話だった。「怖いけれど、すごく面白かった。それで、『どのジャンルを選ぼうか?』と考えた時にホラーだった」。さらに、漫画を描く上で、自分の中に一つのルールを決めた。それは「戦争、病気、貧乏は描かない」というもの。「それを描くと、すぐに話ができちゃう。自分自身を鍛えるために決めた」という。 ホラー漫画を描く際に「怖ければ何でもいい」という考えを強く否定した。「出来事ばかり追いかけて驚かすだけの作品もあるけど、それは『話を考えた』とは言えないんです」。楳図さんの作品には単に人を怖がらせるだけでなく、不条理な運命に直面した時の人間の悲哀が込められていた。その深みが、世代を問わず多くの読者の心を捉えた。 作品は海を超え海外でも評価を得た。2018年に「わたしは真悟」が欧州最大規模の漫画の祭典・仏アングレーム国際漫画祭で「遺産賞」を受賞。楳図さんが「漫画家や芸術家ではなく名前を肩書にしたい」と話していた「UMEZZ」は、世界中の漫画ファンに刻まれ続ける。
報知新聞社