庶民派+高級感の「コンビニBAR」でファミチキ専用ハイボールで乾杯…ローソン、ファミリーマートが参入するなか、セブンーイレブンだけはBAR参入しない理由
つまみ、ほしいな…ここコンビニですよ!
最初に渡されたメニューに目を通すと、スコッチウイスキーやブランデーは500円から、カクテル類は700円からとリーズナブル。そしていま世界的にも人気が急上昇しているジャパニーズウイスキーも1杯800円~1000円で楽しめる価格設定となっていた。 「お酒の美術館」ではオールドボトルを安く仕入れる独自ルートを確立しているそうで、このようにリーズナブルな価格を実現できるようだ。 ちなみに、こちらの店舗では、コンビニで買ったおつまみ類をバーナーで炙ったり、燻製にしてもらえたりするサービスもある。 筆者は事前に購入して持ち込んでいた「ファミチキ」をつまみに、ファミチキ専用に作られたというハイボールを頼んでみた。 揚げものと合うように、さっぱりとした味わいに仕上げられていて、ウイスキー特有の癖がなく、非常に飲みやすい。隣に座っていた常連客によると、このファミチキ専用ハイボールは店舗ごとにブレンドが違うそうだ。たしかに「お酒の美術館」のサイトには、店舗の土地をイメージして、ソムリエが一からブレンドを監修していると記載されている。 次に、店長に「明治通り店」の特徴を聞いたところ、「国内外でも珍しいオールドボトルを取り揃えているところ」とのこと。その言葉どおり、お酒の棚には珍しいボトルがずらりと並んでおり、入手困難となっている「ニッカ宮城峡」や「ニッカ余市」なども揃えている。これらは外国人客からの需要も高いんだとか。 コンビニBARは、コンビニの中にあるという気軽さはありつつも、こだわり抜かれた酒や空間が本格的で、まったく新しいBAR体験を提供していた。
イートインスペース&24時間営業の特徴はBARと親和性がよかった
ではコンビニがBARという新しい業態に取り組み始めたのは、どういった背景があるのだろうか? ファストフードや外食産業に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらった。 「コンビニがBARを取り入れた背景には主に2つの理由があります。まず1つ目に、以前から増え始めていたコンビニのイートインスペースとBARの相性がよかったということ。 コンビニ側には以前から、昼食やカフェタイムにちょこっと利用してもらうよりも、アルコールという単価の高いものを提供することで、お酒をゆっくり嗜むような新たな客層を取り込みたいという狙いがあったのだと推察できます。 2つ目は、コンビニの生き残り競争が熾烈になっているということ。コンビニチェーン同士の戦いが厳しいのはもちろんですが、コンビニ対スーパーという競合構図もあります。お惣菜などをはじめ、いまやスーパーマーケットにも手軽でおいしく安いものが揃っているので、コンビニの強力なライバルとなっているのです」(重盛氏、以下同) 大手チェーンのなかで最大手のセブン-イレブンが唯一、コンビニBARに参入していないが、その理由は? 「セブン-イレブンは前々からPB(プライベートブランド)に力を入れており、独自のブランディングで充分な固定ファンを獲得できています。すでにローソンやファミマと差別化が図れているため、ライバルチェーンが試験的に開始したバーにわざわざ参入せず、様子見をしているのでしょう」 ではコンビニBARはこれから、増えていくのかだろうか。 「いまコンビニ各社の課題となっているのが各々のブランディングやローカル化です。そのコンビニにしかない“強み”というものが現在は曖昧になっていますので、ストロングポイントをいかに見つけて売りにするのかということが課題になっています。 また、ライバルのスーパーにはないコンビニの最大の特徴は24時間営業であることで、BARはその強みとの親和性が高いです。そのため今後もコンビニBARは普及していくのではないでしょうか」 取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio