そのアイテムを一瞥しただけで胸が射抜かれ、物欲を刺激される。素材や仕立て、装いの愉しみを喚起し、人生の起爆剤にもなる。今回紹介するのは、ディオールのツイードシューズ。

鬼才キム・ジョーンズの真骨頂

STYLING=髙田勇人

“故きを温ねて新しきを知る”とは、新たな価値を生みだす際には過去を知ることが欠かせないという普遍的な哲学。日々刺激的なクリエイションが生まれるファッションの世界も同様で、老舗ブランドのアーカイブからリファインされるアイテムは、想像の上をいく名品が少なくない。 ディオールのアイコン「カナージュ」は、正方形と菱形を交差したステッチモチーフで、その誕生は1947年まで遡る。そんなアイコニックなモチーフをコットンツイードで優美に織り上げ、クレープソールのメンズローファーにあしらったのが新作のこの1足だ。 ウィメンズウェアの定番素材をアイコンとともに靴のアッパーに盛りこむ大胆さは、鬼才キム・ジョーンズだからこそなせるクリエイティヴの真骨頂。 偉大なレガシーが時代の衣を纏（まと）って斬新な姿に生まれ変わり、身につける人の心を鼓舞する。ファッションの面白さはまさにこういうところにある。 「ディオール バッファロー」¥210,000（ディオール）