《連載:茨城・飛躍 2025》(2)彫刻家 酒井華さん(23)
■「自分らしさ」表現探究 「ゆったり穏やかな雰囲気で日々過ごしたい。そういう作品を目指している」 自身の「好き」を突き詰めてきた。2022年、日展彫刻科で初入選し、特選を受賞。24年、テラコッタ作品「テディベア」で2回目の特選に輝いた。 幼少期から絵を描き、油彩画を学ぶために大分県立芸術文化短大に進学した。それぞれに個性を確立している周囲に圧倒され、次第に自信を失い、表現することに行き詰まった。 スランプに苦しむ中で、転機になったのが彫刻の演習だった。平面的な絵画とは異なるアプローチに楽しさを感じ、表現する喜びや達成感を取り戻した。「彫刻を選んで良かったのかまだ分からないが、自分の軸を見つけるきっかけになった」とほほ笑む。 昨年春、筑波大大学院に進学し、さらに彫刻への学びを深めている。最も強い関心を向けるのは布の表現だ。素材ごとに異なるボリューム感やくしゃっと寄ったしわ、服の形…。美しく、より魅力的に作品化するため、モチーフをじっくり観察しながら模索を続ける。 現在、制作しているのは大きなテディベアに体重を預け、ぎゅっと抱きつく子どもの姿。テラコッタ粘土による大らかなシルエットと、表情や細部へのこだわり。粘土にへらを当て完成に近づくにつれ、ふわっとした可愛らしさや温かみが加わっていく。 「一目見て『あの人の作品だ』と思ってもらえるような自分らしさを見つけたい」 ■さかいはな 2001年宮崎県生まれ。筑波大大学院在学中。24年の日展で特選を受賞。作品「テディベア」は巡回展で展示されている
茨城新聞社