「高田松原はなくしちゃだめだ!」津波で流されたマツ、偶然から再生へ 成長阻む新たな異変も#知り続ける
■新たな脅威は「クズ」 松林の成長を阻む
マツの枝には「クズ」のツルが締めあげるようにきつく絡みついていました。クズはマメ科のツル性植物で、ほかの植物に覆いかぶさりながら生育範囲を広げます。市民の思い出がつまり、未来の子ども達にも思い出を作ってもらおうと始まった高田松原の再生。しかし、植樹が終わったばかりのマツがクズの影響で枯れはじめていたのです。 2月3日、高田松原を守る会の理事5人と県内外から参加したボランティア3人がクズ退治に集まりました。マツの枝に食い込むように絡みつくクズのツル。葉が落ち枯れたように見えても今のうちに刈り取らなければ、夏にはまた葉を茂らせマツを覆いつくしてしまいます。しかも、地を這った「クズ」の節から根をはやし、横にも次々と広がってしまうのです。鈴木さんも、大切なマツを守ろうと鎌に力をこめます。 「高田松原がクズにやられるとは思っていなかった。やりがいのある作業だから、今日の昼飯は美味しいだろう。」 発災直後、すっかり流され再生は無理だろうと一度は諦めかけた松林。思わぬ偶然からかつてのマツの子孫と出会い松林再生に挑む鈴木さんは、自身の思い出と市民の誇り、そして未来の子ども達の笑顔を取り戻す取り組みを決して諦めることはありません。
■「頑張ってくれよ」 再生に尽力した男性の思い
長く活動をリードしてきた鈴木さんは3年前に肺がんの手術を受け、現在も抗がん剤治療中。最近では体調によって活動に参加できない時も増えてきました。 「作業できるときにはこうやって作業に参加するし、あと、作業ができなくなることも考えられますので、『頑張ってくれよ』と他のメンバーやボランティアを心の中で応援するっていう格好。そして治療の合間に松原にも来て、成長していくマツの姿を見たいと思います。」 松林の再生には50年かかると言われています。それでも、これからも多くの人々の力を借りながら、陸前高田市のシンボルは必ず未来へと守り受け継がれると、鈴木さんは信じています。 この記事はIBC岩手放送とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。