マスク氏が主導する政府効率化省(DOGE)の課題
政府支出は大幅に削減されるか
DOGEが抱える大きな問題の一つは、マスク氏の利益相反問題だ。DOGEを通じて自身が担う企業に都合の良い政府組織の変更、行政執行、そして規制緩和が進められるのではないかという疑いの目を向けられることは必至だろう。その兆候は既に見られている。トランプ次期政権は、自動運転の規制緩和を検討していると報じられているが、それが実現すれば、マスク氏がCEOを務めるテスラには強い追い風となる。 マスク氏が経営する企業では、米宇宙開発企業スペースXだけでも150億ドル余りの連邦政府との契約を抱えており、また、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の調査によると、マスク氏の企業は少なくとも20の連邦規制当局の標的になっているという。 そして第2の問題は、連邦予算の大幅削減がもたらす経済への悪影響である。トランプ氏はDOGEの役割について、「われわれは、年間6兆5000億ドルの政府支出全体に存在する膨大な無駄と不正を排除する」と説明している。他方、マスク氏は、年間5,000億ドルの無駄な予算の削減を計画している。これが実現される場合、その規模は年間名目GDPの1.7%にも達する計算だ。米国経済を相当悪化させる可能性があるだろう。 トランプ氏は教育省を廃止し、政策と資金調達の管理を州に戻すと約束した。マスク氏はメディケアに関する不正の発見と撲滅、公有地の売却拡大に特に関心を持っているとされる。ラマスワミ氏は、「複数の特定の機関が完全に廃止されるとみている」と述べており、連邦政府の肥大化した分野で規模の縮小、大量の人員削減を行う考えを示している。その対象となる組織として同氏は、国防総省、教育省、そして医療を挙げた。 ただし、大幅な予算削減は、議会で容易に承認されない可能性がある。1974年に制定された「議会予算・執行留保規制法」は、議会が撤回を決定しない限り、大統領は割り当てられた予算を執行しなければならないと定めている。他方、大統領が執行を留保する規定もある。この規定を用いて、議会が可決した予算の執行を大統領が留保することで、大統領が議会の承認なしに大幅な歳出削減を行うことができる可能性がある。