「女性だけ愛嬌まで求められるのはなぜ?」 高学歴女子の生きづらさを描く『東大の三姉妹』 漫画家・磯谷友紀
『王女の条件』『ながたんと青と』など、自立した女性を描いてきた漫画家・磯谷友紀さんの最新刊は『東大の三姉妹』。外資金融勤めの長女・世利子(34歳)、ドラマプロデューサーの次女・比成子(32歳)、現役東大生の三女・実地子(22歳)の東大三姉妹と、東大に落ちた末っ子長男・一理(18歳)の4きょうだいの姿を通して、高学歴女子の生きづらさを描いた野心作だ。どうしてこのテーマに挑んだのか、その思いを聞いた。
合コンで学歴を隠す女性たち
――『東大の三姉妹』はタイトル通り、東大卒&在学中の三姉妹の物語。なぜこのモチーフを選んだのですか。 磯谷友紀さん(以下、磯谷): 女性の生きづらさについて、ずっと書きたいと思っていました。東大とまではいかなくても、高学歴であったり、ハイキャリアであることを隠した経験のある女性は多いと思います。編集さんたちと話をしていても、例えば合コンへ行くと、学歴をひた隠しにする人がいるとも聞きます。私も前職は編集者で、そのときに東大卒の女性タレントさんと仕事したことがあったのですが、その方が、優秀過ぎないように、フレンドリーに見えるようにと気を使っていたのが印象的でした。高学歴男性は不愛想でも許されることも多いのに、なぜ女性は愛嬌を求められてしまうのだろう、と引っかかっていました。 ――漫画でも、長女・世利子が一番先に答えがわかっても手を挙げるのをやめるシーンがありますね。能力ある女性が自ら、その力を隠してしまう。その背景にはなにがあると思いますか。 磯谷: 根深い問題だと思います。「女の子が勉強出来てもしょうがない」と親に言われてきた世代が今度は親になって、同じことを子どもに言ってしまう。私の周りには、さすがにこんなことを言う人はいませんが、それでもまだ、「女の子は勉強をしたうえで、かわいげもあったほうがいい」というムードは感じます。今の日本ではまだまだその方が生きやすいから、大人たちも処世術としてアドバイスするのでしょうが、だとしたら社会がもっと進化しないとだめだと思うのです。 この漫画は、長女の世利子と次女の比成子が30代で、三女の実地子と末っ子の一理が22歳、18歳と、いわゆるZ世代なんです。私はそこには希望を込めていて、実地子と一理には、上の二人がこれまでの価値観に縛られているところを壊してほしいと思っています。