認定申請中に就職したコンゴのIT技術者 若手のNPOが仲介、専門職の在留資格を得る【あなたの隣に住む「難民」⑥】
データベースを調べていて、政府関係者の不正の証拠を見つけた。口封じのためだろう、同僚が次々と逮捕される。「国外へ逃げるしかない」。当時20代だったIT技術者のジョゼフさん(仮名)は2019年、アフリカ中央部コンゴ(旧ザイール)から来日した。 移民のドイツ国籍取得数は日本の12倍 受け入れに積極的な本当の理由 20年
難民認定を申請したが、支援団体から「日本では、なかなか認定されない」と告げられる。所持金を使い果たし、ホームレスとなって東京都内の公園で寝起きした。(共同通信編集委員=原真) 日本政府は難民申請者に対し、アジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)を通じて「保護費」を支給している。大人1日1600円の生活費と、1人暮らしで月6万円までの家賃補助が柱だが、生活保護の水準より低い上、申請から支給開始まで数カ月かかる。 ジョゼフさんは保護費をようやく受け取り始めたころ、NPO法人「WELgee(ウェルジー)」に出会った。 ▽若手NPOが支援 16年設立のWELgeeは、難民申請者が日本企業に就職できるよう伴走している。渡部カンコロンゴ清花(さやか)代表理事は「認定以外のゴールを設定した」と解説する。 22年の出入国在留管理庁の統計によれば、難民審査は異議手続きを含め平均で4年近くかかり、しかも98%が不認定とされる。「同世代の若い申請者が、待つだけの日々を送っている」と渡部代表。
学生時代から海外の国連機関などで途上国支援に関わってきた渡部代表は、「国家に守られない人」が難民認定されなくても、経験や能力を生かして日本で人生を再建できる道を探ってきた。 ジョゼフさんはWELgeeで日本の企業文化や日本語を学び、キャリアについて話し合いを重ね、さまざまな企業に応募した。しかし、新型コロナウイルス禍もあって、良い返事を得られない。「難民は貧しい国から来た、教育を受けていない人というイメージがあり、理解してもらうのが難しかった」。ジョゼフさんは振り返る。 22年、東京のIT企業・シティコンピュータへの入社が決まった。川原雅友社長は「難民だから採用したわけではない」と言いながら、ジョゼフさんを高く評価する。「命がけで来ているから、仕事への思いが熱い。周りも、もっと頑張ろうという気になる」 ジョゼフさんの在留資格は、難民申請のための短期の「特定活動」から、専門職向けの「技術・人文知識・国際業務」に変更が認められた。現在は新規事業のシステム構築などに携わる。
「WELgeeのスタッフは日本の家族のよう。職場にも満足している」。ジョゼフさんは言う。「難民など、異なる背景を持つ人がいる多様な社会の方が、創造的になれるし、バランスも取れるはずだ」 WELgeeの支援で就職が実現した難民申請者は20人に達した。渡部代表は「難民人材を受け入れた職場は、コミュニケーションが増えて、活性化している。社会貢献だけでなく、企業価値の向上にもつながる」と強調する。
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