「本州一の極寒地」零下22.8度だけど…笑顔 氷上ワカサギ釣り 湖上に並ぶ多彩なテント
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。 【画像】色とりどりのテント 冬の風物詩「氷上ワカサギ釣り」
極寒地ゆえの「楽しみ」
北都・盛岡の冬は途方もなく厳しい。 これまで新潟、福島、宮城などの北国に勤務してきたが、盛岡の寒さはレベチ(レベル違い)である。 例年、初冬に降り積もった雪は春先まで路面で凍り付き、人々は数カ月の間、両手をわずかに広げてペンギンのようになって路地を歩かなければならない。 ただ、極寒地ゆえの「楽しみ」もある。 本州一の厳寒地として知られる盛岡市藪川の岩洞湖に足を運ぶと、冬の風物詩「氷上ワカサギ釣り」が盛況だった。
快晴の湖上に並ぶ色とりどりのテント
午前6時56分の藪川の気温は、今季(2022年)最低の零下22.8度。 釣り人たちは震えながら、氷下の魚との格闘を楽しんでいた。 「岩洞湖は広くてとても気持ちいい!」 一戸町の小学3年生、女鹿口(めがぐち)優矢さんは、ドリルで氷上にワカサギ釣り用の穴を開けながら満面の笑みだ。 盛岡市のパート女性(38)も「1回やってみたかった。思ったよりも釣れないけれど、とても楽しい」とうれしそう。 快晴の岩洞湖上に、色とりどりの小さなテントが並ぶ。週末は計約3500人の人で賑わうらしい。 岩洞湖漁協の職員が真っ白な息を吐き出して言った。 「夜明け直前の氷の上は特にきれいですよお。白銀の風景に朝靄(もや)が立ち、降り注ぐ太陽の光を、湖面の氷が鏡のようになって、明け方の空へとはね返すんです」 (2022年1月取材) <三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した>