【東日本大震災】「所持金はたった700円」 支援を受けられずに追い詰められる外国人被災者たち #知り続ける
再就職が極めて難しいという現実
「震災後、外国籍の人々を取り巻く環境はやはり悪化したのでしょうか?」 私は先日訪れた宮城県南三陸町で暮らすフィリピン人女性、佐々木アメリアへのインタビューを思い出して聞いた。 「ええ、残念ながら、被災地における外国人を取り巻く環境は極度に悪化しました」と李は目を伏せて言った。「震災後、石巻市と気仙沼市が20歳以上の在留外国人にアンケートを実施したところ、震災前は非正規雇用が石巻32パーセント、気仙沼36パーセントだったのに対し、震災後はいずれも23パーセントや31パーセントと極端に減っていました。増えたのは『無職・主婦・学生』という無収入層で、石巻では29人から45人に、気仙沼では22人から30人に急増していました。それらの統計は、多くの被災外国人が震災後、職を奪われたことを意味しています」 「被災地で再就職はできなかったのでしょうか?」 「現実問題として、かなり難しかったと思います。日本では定住外国人に対する社会政策が乏しく、多くの結婚移住者たちは日常生活のなかで日本語を学びます。滞在年数を重ねることである程度の日本語は理解できても、読み書きのできない人が圧倒的に多いのです。被災地の外国人へのアンケートでは、自分の日本語能力に対して『やや問題がある』『非常に問題がある』『まったくできない』と答えた人が、石巻では『読み』『書き』『会話』の順で、58パーセント、71パーセント、39パーセント。彼女たちは日本語のスキルが低いため、一度職を失ってしまうと再就職が極めて難しくなってしまうのです」 ※本記事は、新聞記者でもある三浦英之氏が被災地の取材を続ける中で「東日本大震災で亡くなった外国人の数を、誰も把握していない」ということを震災から12年たって初めて知り、その外国人被災者たちの足跡をたどった著書『涙にも国籍はあるのでしょうか 津波で亡くなった外国人をたどって』の一部を再編集して作成したものです。
デイリー新潮編集部
新潮社