杉咲花×志尊淳「志尊くんにとても救われていた」撮影現場で感じた“すごさ”とは
志尊くんは人間としての器が桁外れ
――だからこそアンさんは初対面の貴瑚にも優しくなれるのですが、その繊細さは紙一重のものでもありますよね。 志尊 その危うさに誠実に向き合うのが役者としての僕の仕事だし、真摯であらねばならないとも思います。毎日、長い夜の孤独や不安に耐えながら、気づいたら明けていることのくり返しで必死に生きている。その支えになっているのが貴瑚でもあって、まわりにいてくれる人たちのありがたみを僕自身も感じながら乗り越えていったような気がします。 杉咲 志尊くんは人間としての器が桁外れなんです。 志尊 なにそれ(笑)。 杉咲 こんなに飾らない愛情を持って現場にいてくださる方はそういないと思っていて。現場では、役としての関係性を尊重しながら、完全にサポートに徹してくれていたんです。その時そこにいる人々や、現場がどういう状況にあるのか、いつもまわりを見つめている姿に心から敬意を抱きました。 志尊 照れますね。年々、自分を主張しようと思わなくなっているのも大きいかもしれません。たとえば今日とかだったら、一緒に取材する人が楽しそうならそれでいいか、と。もちろん伝えたいことがないわけではないし、聞かれれば自分が思っていることは答えますけどね(笑)。 杉咲 特に印象に残っているのが、クランクインの日。貴瑚が母親に別れを告げにいく、その隣にアンさんが寄り添ってくれているシーンだったんですが、撮影が始まる直前に毎回、一瞬だけアンさんとしてのまなざしを私に向けてくれたんです。カメラには映らないけれど、貴瑚を演じる上では間違いなく何かが作用していて。志尊くんは、そういう人なんです。いつだって制作陣の一人として、どこまでも物語に寄り添い続ける姿に、心の底から救われていました。 志尊 褒めすぎです(笑)。僕がこの作品に対して一番思っているのは、「杉咲花が報われてほしい」ってことなんですよ。どれほどの思いで花ちゃんがこの作品に向き合っていたか、ずっとそばで見てきたからこそ、その一言に尽きる。みなさんが思っている以上に、杉咲花は素晴らしいんですよ。現場の居方ふくめて、すごいとしか言いようがない。完成した作品を観て花ちゃん自身がどう思っているかわからないけれど、あのとき花ちゃんが注いだぶんだけ返ってくるものは絶対にあると僕は確信しています。