〈訪問介護がなくなる?〉報酬減で相次ぐ倒産と人手不足の悪化で窮地に、保険料増額で改善を
介護保険の報酬改定で訪問介護事業者が窮地に陥っている。4月に決まった基本報酬が減額されたためだ。武見敬三厚生労働相は「さまざまな処遇改善加算を新設し、しかも手続きを簡素にしたので支給額は増える」と説明してきたが、現実はそうはではないようだ。 【図表】介護サービスの収支差率
訪問介護事業は赤字に転落
愛知県内で訪問介護を中心に介護保険事業を展開している生活協同組合コープあいち(名古屋市)。名古屋市をはじめ岡崎、豊橋、春日井など県内各市の14事業所で訪問介護を営み、ヘルパーの総数は500人近い有数な規模である。 2024年の4月から7月までの訪問介護による収入は2億8718万円。前年同期が3億1759万円だから1割近くの収入減となった。利益も1668万円から439万円と大きく落ち込んだ。 「訪問介護の基本報酬が下がったことが大きな要因です」と小河原昌二常務理事は話す。この状態が続くと今年度の収支はギリギリで、「何とか赤字にならないように努めたい」とも言う。 2000年4月に始まった介護保険制度は、3年毎に制度の手直しと事業者に支払う報酬を見直してきた。要介護高齢者が年々増え続けるとともに、総報酬額も膨らみ、財源の半分を担う40歳以上の国民が納める介護保険料も上がってきた。 財源の4分の1は国税。その歳出増を抑制しようと財務省はかねてから、介護サービスの縮減を財政制度等審議会などを通じて厚労省に圧力をかけている。 その表れが、今回の訪問介護の報酬減額となった。介護サービス全体では他産業の賃上げを踏まえて1.59%のプラス改定とした。だが、訪問介護事業は、「収支差率(利益)が7.8%あり、全介護サービスの平均2.4%よりかなり高い」ことを理由に、厚労省は基本報酬を2~3%の減額とした。 その影響が各地の事業所に出ている。コープあいちも所属する事業支援団体、全国コープ福祉事業連帯機構(コープ福祉機構)が加盟14法人、127訪問介護事業所(11都府県)の4~5月期の経営状況を調べたところ、訪問介護の総利益が赤字に転落していることが判明した。