相続人のいない遺産、過去最多769億円 最後は国の収入になっていた
少子高齢化、未婚者増…できる事前の備えは
遺産の相続人がいないため一定の手続きを経て最終的に国に納められた財産の総額が2022年度、過去最高の計約769億円に上ったことが17日、最高裁への取材で分かった。10年で2倍超に急増。県内でも近年、身寄りのいない人の遺産が国の収入となる事例が相次いでいる。少子高齢化や単身世帯の増加で宙に浮く遺産が増え、今後、社会問題になりかねない。遺言書を作るなど、事前の備えが求められそうだ。 【グラフ】相続人がおらず国庫帰属となった相続財産の額
相続人がいない国庫帰属相続財産の総額は22年度、21年度(約647億円)より約122億円多い768億9千万円余に上った。記録に残る中で最も多く、13年度(約336億円)の約2・3倍だ。
亡くなった人の財産は、遺言書がなければ配偶者や子などの相続人が受け継ぐ。しかし全員が相続放棄したり身寄りがなかったりした場合、債権者など利害関係人らの申し立てにより、家裁が弁護士、司法書士ら「相続財産清算人(旧・同管理人)」を選任。清算人は債務を清算し、生前に手厚く介護をしていたなどの「特別縁故者」に財産を分けた上で、残った分を国庫に帰属させる。清算人への報酬や経費などを引いてなお残れば、国庫に移る仕組みだ。
公益財団法人「県みらい基金」には、身寄りのない人から「遺産を(国庫に納めるのではなく)地域に役立ててもらうにはどうしたら良いか」との相談が相次いでいる。高橋潤理事長(70)は「遺言書を作ることが有効。医療・福祉団体やNPOへの遺贈寄付という選択肢もある」。
厚生労働省の人口動態統計によると22年に国内で亡くなった人は156万人余りで戦後最多だった。相続制度に詳しい長野市の福本昌教弁護士(47)は「少子高齢化が進み未婚の人が増える中、遺産の清算手続きが必要となる事例は増えていく」と指摘する。
ただ、死後への備えや終活に対する意識はまだ高くはなく、“浮遊”する遺産は増加傾向だ。国庫に帰属させるには手間も費用もかさむため、福本さんは「専門職の担い手確保が課題」としている。