「こんな最高の人生はないで」東大と京大を率いる日本アメフト界の名将らが薫陶を受けた人物は?
■東大指導は「頭でっかちにならないように」
森HCは、明らかに戦力が劣るチームを率いても、的確な分析で戦前の予想を覆す結果を何度も演じてきました。東大も、早稲田大学、法政大学といった強豪校と比べてお世辞にも戦力が勝っているとはいえません。それでは、頭脳明晰な東大生にも分析力で相手に勝つようなことを指導しているかを問うと、百戦錬磨の智将から返ってきた答えは「ノー」でした。 森「分析に秘訣があるわけではありません。アメフトの8割、9割は誰が考えてもロジカルに考えれば、だいたい同じ答えがでます。逆にうちの選手たちは頭が良いので、頭でっかちにならないようにしています。フットボールはフィジカルとファンダメンタルが大事。それから、闘志や気持ちといったメンタルで決まるスポーツです。それがないのに、頭でっかちになると勝てないスポーツだと強調しています。当然、知識も分析も大事ですけど、やっぱり速く強くプレーできないと絵に描いた餅なので、そこに逃げないようにしないといけません。基礎技術を磨くことや、フィジカルを強くすることは楽ではありません。だから、そこから逃げるために分析に走ると永遠に勝てません」 頭でっかちにならないように、体力と基礎を鍛える。これが戦力で私立大に劣る東大の進む道だが、同じ国立大の指揮を執る京大の藤田HCも森HCの考えに同調します。 藤田「東大と同じです。フットボールの本質はそこ(フィジカル、ファンダメンタル)にあるので、そこは避けて通れません。そのレベルが高いチームが勝っているだけです。関西学院大はファンダメンタルがしっかりしているし、フィジカルも強い。そのうえで作戦を遂行している。だから、他はなかなか勝てない」 第65回双青戦の結果は、森HC率いる東大のランオフェンスが冴え渡り、藤田HCは"初陣"を白星で飾ることができませんでした。とはいえ、まだ5月で本番の秋シーズンまではまだ時間的猶予があるため、両チームとも結果に一喜一憂せず、お互いに意識することもなかったそうです。 名将に鍛えられた東大と京大がひと夏を乗り越え、秋のシーズンでどんなチームに変貌するのか。そして、もし大学アメフト日本一を決める甲子園ボウルで日本最難関大学の2校が相まみえたら、水野氏の言葉を借りれば「こんな最高の人生はないで」。 そうして9月に開幕したシーズン。東京大学は明治大学相手に7-27と開幕戦を落としました。一方、京都大学は近畿大学相手に21-17で接戦を制しました。まだまだ始まったばかりのシーズン。両チームが成長していく様を見届けたい。