どうしても「残酷さ」が…超映像美の実写『ライオン・キング』が避けられなかった問題点
『ムファサ』はどうなる?
●リメイクでバランスを取ったポイントも とはいえ、劇中ではミーアキャットの「ティモン」が、「肉食獣と一緒にいると落ち着かないんだ」「それは生命の環とはぜんぜん違う、ただの直線だ」という考えを語るシーンもあります。つまり、生命の環の価値観が絶対ではないことも示されており、それは「ハクナ・マタタ(くよくよするな)」という、彼らの価値観を相対的に際立たせる効果も生んでいます。 また、主人公の「シンバ」が王位を継ぐかどうかよりも、彼自身のアイデンティティーを問う場面もありますし、父である「ムファサ」からの「手に入れることばかりを考えるな、まことの王は、与えることを考えるのだ」といった教えもあって、ただ受け継ぐことが王たる資格ではない、と示されるバランスにもなっています。現代にリメイクする際に違和感を覚えてしまうであろう要素は、作り手も十分に意識しているといえるでしょう。 そもそも、前述してきた問題は人それぞれで感じ方が大きく異なり、「見ているうちに慣れた」「不気味の谷はとっくに超えて映像のすごさに圧倒された」という意見ももちろんあります。そもそもフルCGのみで「実写そのもの」と思える映像のスペクタクルを作り出したことは感嘆するしかありませんし、その試みをもって本作を称賛する人も多いでしょう。 この超実写版の路線が合わない人は技術が進化してもとことん合わない、という可能性も高いですが、「もう慣れた」「不気味の谷のことを考えもしなかった」人にとっては、2024年12月20日より公開の『ライオン・キング:ムファサ』もきっと楽しく見られるでしょう。 こちらは若き日のムファサ王と「スカー」の兄弟の絆を描く前日譚であり、映像のさらなる進化も期待できますし、批判されがちだった不気味の谷を超えるための工夫も込められているのかもしれません。予告を観る限りでも表情が前作より豊かに見えますが、果たしてどうなっているのでしょうか。
ヒナタカ