「売れなかった」パン、夜に販売…都会に現れる〝パンを焼かない〟パン屋さん SNSでも反響
利益は難しくても「誇り」
お店でその日残ったパンを引き取りますが、売値はパン屋さんに決めてもらいます。1個で売るのではなく、数個セットで袋詰めにして販売。売れた数の半額をパン屋さんに支払い、残りは人件費や交通費、諸経費に充てられます。 フードロス対策や「仕事づくり」が目的のため、夜のパン屋さんの営業時間内に売れなかったとしても割引はしません。基本的には売り切りますが、売れなかったパンはお店からの寄付として子ども食堂などに提供するそうです。 「利益はなかなか難しいですね」と枝元さん。しかし、「仕事をつくることができているため、誇りを持っています」と胸をはります。 長年料理の仕事をしてきた枝元さんは、食べ物が大量に残り、捨てられる様子を見てきました。 「みなさんが少しでも安く買うためには大量に作らないといけません。でも、それには大量廃棄もついてきます。『利益を上げるために残ったら捨てる』ことは間違っていると思いました」 「『夜のパン屋さん』は利益は少なくても、食べ物の〝いのち〟を全うさせることができます。仕事として確立するためには利益を考えないといけませんが、まっすぐな気持ちでいられるところがいいなぁと思うんです」
「全国に広がってほしいなぁ」
今年1月には、この「夜のパン屋さん」の投稿がSNSで話題になりました。 ”夜のパン屋さんは、パンを焼かないパン屋です。 街の職人が大切に焼いたパン。でも、営業時間内で売り切れず、ロスとなってしまう時には、夜のパン屋さんがお預かりして、代理販売をしています。パン屋にとっては小さな収入となり、夜のパン屋さんではスタッフの雇用が生まれます。” ーー夜のパン屋さん(@yorupan2020)の投稿 投稿には「素敵な取り組み」「全国に広がってほしいなぁ」「この仕事してみたい」といったコメントが寄せられ、5万近い「いいね」がつきました。 ホームレスの人の仕事をつくる目的で始まりましたが、仕事を失い困窮する人や学生など、現在のスタッフのバックグラウンドは様々です。 初期から働くスタッフの一人でビッグイシューの販売員でもある浜岡哲平さん(45)は数年前、ホームレスだった時期がありました。ビッグイシューの販売を始めてから家を借り、「夜のパン屋さん」の仕事もするようになったといいます。 「いろんな場所のパン屋さんのパンを食べてもらえるし、僕らの仕事にもつながっている。僕は働くことが好きですし、ここではお客さんやスタッフと話せて楽しいですね。常連さんもたくさんいます」 発案者の枝元さんは、今後について「社会にとってどのようなことがいいか、利益を優先するだけではないやり方を探っていきたい」と話します。 「『夜のパン屋さん』はニッチな仕事だと思いますが、『それもいいね』と思っていけることを仕掛けていきたいです」 ※8:08 記事の一部を修正しました。