『ときメモ』が30周年で大復活。あの頃の恋愛ゲームを振り返る
恋愛シミュレーションが多様化する1990年代半ば
●アンジェリーク 1994年/光栄(現コーエーテクモゲームス) 『ときめきメモリアル』と同年の1994年にスーパーファミコンで発売された女性向け恋愛シミュレーションの元祖『アンジェリーク』。現コーエーテクモホールディングス会長の襟川恵子氏の、女性向けゲームが作りたいという念願がかなって誕生しました。 宇宙を治める女王の候補となった少女アンジェリークが、光や水など9つの力を司る守護聖たちの助けを借りて大陸を育成するなか、恋が芽生えていく……。女性向けという新規性にとどまらず、壮大な世界観や光栄らしいシミュレーション要素など、内容盛りだくさんで独自のブランドを築くことに成功しました。 その後女性向け恋愛シミュレーションは、NECホームエレクトロニクスがPC-FX向けに出した『アルバレアの乙女』(1997年)など数本があった程度で、本格的な発展は2000年以降を待つことになります。 ●NOeL NOT DiGITAL 1996年/パイオニアLDC 1996年にPS1で発売された『NOeL NOT DiGITAL(ノエル・ノット・デジタル)』は、ある意味で時代を先取りしすぎたタイトル。夏の海辺で3人の女子高生と出会った主人公は、ビデオ通話で会話を続け、クリスマスまでに仲を深めていきます。アニメで多彩に表情を変えながら滑らかに動くヒロインたちのビジュアルと、女子高生らしいリアルな会話は、現代にも通じる感覚がありました。 ミーハーでおしゃれが好きな清水代歩(かほ)、メカやコンピュータに強いメガネ少女の岡野由香、落ち着いた雰囲気の陸上部員・佐野倉恵壬(えみ)と登場する少女を3人に絞り、その分学園生活で起きた事件やバイト先の話、同級生の噂など、会話が濃密になっているのが特徴。PS1でシリーズが3作展開されましたが、その後は音沙汰なし。復活の可能性はあるのでしょうか。
ゲーム史に名を刻むセガの恋愛ゲーム
●サクラ大戦 1996年/セガ 1996年にセガサターンで発売された『サクラ大戦』は、恋愛と戦略シミュレーションが融合した「ドラマチックアドベンチャー」。数多くのアニメやゲームを手掛けてきたクリエイター・広井王子氏が総合プロデューサーを務めました。もうひとつの大正時代「太正」を舞台に、平時は大帝国劇場のモギリ係、非常時は「帝国華撃団」の隊長となって少女たちとともに帝都の平和を脅かす「降魔」と戦っていきます。 正義感が強くて明るい性格ながらヤキモチ焼きの真宮寺さくら、高飛車なお嬢様の神崎すみれ、フランスから来たおしゃまな少女アイリスなどヒロインは個性派揃い。大正ロマン世界でのスチームパンクという目新しい切り口や、リアル舞台「サクラ大戦・歌謡ショウ」で2.5次元のパイオニアとなった意義など、恋愛ゲームの枠を超えて、ゲーム史のマイルストーンとなった作品です。 ●トゥルー・ラブストーリー 1996年/アスキー 『ときメモ』のヒットを受け、さまざまなメーカーから恋愛ゲームが発売されていた1990年代半ば。特にファンから支持を集めたのが、1996年にPS1で発売された『トゥルー・ラブストーリー』です。 主人公は青空高校に通う2年生。1ヵ月後に転校が決まり、学園での思い出づくりに励むことに……。ゲーム冒頭で春夏秋冬、四季のいずれかを選べるのがポイント。メインヒロインとして高い人気を誇ったピアノ好きの桂木綾音をはじめ、登場するヒロインはいずれも身近にいそうな親近感がありました。 下校時のヒロインたちとの会話は「天気」「進路」「テレビ」「占い」「男性の好み」など選択肢豊富。仲良くなっても、転校というタイムリミットが迫る空気感も青春の切なさを醸し出しています。 当時アイドルだった仲間由紀恵さんが主題歌を担当。CMも仲間由紀恵さんが制服姿で出演していました。シリーズは4作発売され、その後も『キミキス』『アマガミ』など系譜を受け継いだタイトルが登場しています。 ●センチメンタルグラフティ 1998年/NECインターチャネル 1998年にセガサターン向けに発売された『センチメンタルグラフティ』は、最高潮だった恋愛シミュレーションブームを象徴するような1本です。メディアミックス企画として、本編発売前から大きな話題となり、数量限定の予告用ディスク『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』がプレミアム価格で取り引きされていたのを覚えています。 主人公は幼い頃から親の仕事の都合で転校を繰り返していた少年。春休みを間近に控えたある日、「あなたにあいたい……」という差出人不明の手紙が届きます。 語尾が「~りゅん」の不思議系少女・永倉えみる(仙台)、県議の令嬢で病弱な杉原真奈美(高松)、ロックバンドのギター兼ヴォーカルで気が強い松岡千恵(福岡)……と、バイトでお金を稼ぎ各種交通機関を駆使して、ヒロインたちがいる全国12都市をまわる主人公の1年間は大忙し。冷静に考えるとなかなかにツッコミどころ満載でした。『1』の主人公の葬式に12人のヒロインが参列するところから始まる続編『センチメンタルグラフティ2』(2000年)も語り草になっています。 以上、駆け足で1990年代の恋愛ゲームを振り返りました。個人的には恋愛アドベンチャーになりますが、『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』(1997年)、『久遠の絆』(1998年)、『風雨来記』(2001年)という一連のFOG作品も思い出深いです。甘酸っぱい記憶が蘇るのは、本物の初恋のようですね。 <文/卯月 鮎> ―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]― 【卯月鮎】 ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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