土地の価格、道が一本違うだけで大きく変わるのはなぜ? 1平米6万円差が出ることも! 「路線価図」で街あるきしてみた
実際に歩くのはなぜ?
路線価図の主な用途は、税の算出。つまり、持ち歩いて使うことはまず想定されていません。地域により縮尺も異なります。 中川さんは、土地の価格に関する記事の執筆依頼をきっかけに「土地の価格をただ比べるだけではなく、その理由を考えるべく現地を歩いてみよう」と思いつきました。2005年ごろから、さまざまなエリアで街あるきを続けているそう。 これまでの活動を通して、地形や街の成り立ち、再開発の様子など、たくさんの要素が価格に反映されることを実感している中川さん。「街の現在は地形×歴史でわかる」と話します。 ただし、いずれにしても「路線価が高ければ良い土地/低かったら悪い土地、ということではない」のが大事なポイント。個人の生活スタイルや優先事項、街づくりなどの事業目的によって、土地や住宅の価値は変わってくるからです。
中目黒から渋谷まで歩いてみる
ということで、気持ちよく晴れた某日の午前10時、中目黒の駅前で中川さんと待ち合わせ、渋谷まで歩いてみます! 東急東横線と東京メトロ日比谷線が乗り入れる中目黒駅は、駅周辺の再開発に伴い人気が高まったエリアのひとつ。
指定された集合場所で、まずは路線価図をチェック。実はここが駅周辺で最も数値が高い場所。記された数字は「3710」……つまり1平方メートルあたり371万円。坪単価は1000万円以上に! 「平均的なトイレの面積は、だいたい0.5坪。たとえばの計算ですが、トイレ用の土地代だけで500万円くらいかかっちゃうってことですね」(中川さん)
価格と立地の関係は? 「一つのルールと二つの例外」
ひとまず、中目黒の高台を歩くべく、渋谷とは逆方向へ。駅前の幹線道路から線路沿いの脇道へ入ります。この道は「1690」。駅前の「3710」から、一つ道を曲がっただけでいきなり数字ががくっと下がりました。 「ものを見るときは、『規則性』と『その規則性にのらないもの』に注目します。路線価図による土地と価格の関係は、大きく一つの基本的なルールと2つの例外があると考えているんです」と中川さん。 まず、基本ルールとなるのは「利便性」。 街の中心地(≒駅)から近いと土地の価格は高くなり、遠いと価格は低くなります。幹線道路沿いは価格が高く、路地に入ると低くなるのもこのルールに当てはまります。 しかし、「駅近なのに安い」「駅から遠いのに高い」というケースも。これには、次の2つの例外が関係すると中川さんは考えています。 「例外の一つ目は、住環境。環境がいいと価格は高くなります。閑静なエリアや、景観の良い土地は人気があるため高くなり、すると住宅も高級なものになっていきます。例外の二つ目は、安全性(防災)。地盤の固い土地、水害を避けやすい高台など、安全性が高いと価格は高くなっていきます」