伊藤若冲と円山応挙が同じフォーマットで描いた作品を発見 最新技術でデジタル推定復元も…日本美術にはまだまだある“知られざる鉱脈”
山下氏によると、『釈迦十六羅漢図屏風』をデジタル推定復元する過程で静岡県立美術館の『樹花鳥獣図屏風』の一部である可能性も浮上したといい、さらなる研究が待たれる。『日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!』の監修にあたった山下氏は、これまでも埋もれている素晴らしい作家や作品を発掘し、日本美術の魅力を発信し続けてきた。 「日本美術にはまだまだ世に知られていない作者、作品が数多く埋もれています。来年の展覧会では、これまでほとんど注目されていないものや、一部の研究者が熱心に研究しているものを“知られざる鉱脈”として掘り起こし、紹介します。振り返れば、今や日本美術で一番のキラーコンテンツとなっている若冲も、2000年代以前は“知られざる鉱脈”でした。 近年、いくつか日本美術で国宝指定がなされましたが、指定されるべき作品はまだたくさん眠っています。本展を通じて観客の皆さんがご自身の目で“未来の国宝”を探していただきたい」(山下氏) 本展では若冲、曾我蕭白、長沢芦雪ら「奇想の画家」たちに始まり、室町水墨画、素朴絵、幕末から明治にかけて生まれた絵画や超絶技巧の工芸、大正から昭和の近代絵画史における極めて独創的な作品など、これまであまり眼を向けられていない日本美術を紹介。 展覧会のフィナーレは「縄文土器そして現代美術へ」と題し、山下氏が“次の国宝の一番手”と称賛する重要文化財『深鉢型土器』も出展される。また、現代作家にも呼びかけて、新作を発表する予定だという。そのひとり、縄文人の生活や縄文土器のうねるような曲線、装飾性から着想を得た「JOMONJOMON」シリーズを手掛ける新進気鋭のアーティスト・岡崎龍之祐氏は、この日の記者発表会にも出席していた。 「自分は縄文土器から、日本古来より脈々と続く祈りの造形の歴史を見出してきました。受け継がれてきた祈り、生きることへの願いを込めた新作を制作しているところです。縄文土器から応挙、若冲へと繋がる系譜に作品を連ねることができる機会をいただけたのは、とても光栄なこと。僕自身、展覧会を通じて日本美術に再発見があることを楽しみにしています」(岡崎氏) 縄文時代から現代、そして未来へ──。きらりと光る、日本美術の“鉱脈”が来年、大阪に集う。 取材・文/渡部美也 『日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!』 【会場】大阪中之島美術館(大阪府大阪市北区中之島4-3-1)【会期】2025年6月21日~8月31日
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