reGretGirl 『SUMMER ONEMAN LIVE 2024 “ひとりだと思わないためのホール編”』 初めての試みを満載した東京初ホールワンマン公演レポート
reGretGirl(リグレットガール)が初のホールワンマン公演を開催した。今夏、彼らはワンマン公演を大阪では大阪城野音、東京では昭和女子大学 人見記念講堂で行うという、異なるシチュエーション、異なるセットリストで実施。そこにはバンドがもう一段ステップアップして存在感を増すというモチベーションももちろんあったと思うのだが、東京のホール編のタイトルである“ひとりだと思わないための~”という文言通り、reGretGirlの音楽が鳴る場所でリスナーがどんな気持ちでいて欲しいのか? をより明確にするための挑戦でもあったと思う。曲が持つストーリー性を増幅する映像演出や、ホールだからこそ逆に自由度を増したライブをレポートしていこう。 【全ての写真】reGretGirl『SUMMER ONEMAN LIVE 2024 “ひとりだと思わないためのホール編”』(全13枚) ステージを覆う紗幕に青いバンドロゴ。ファンを迎え入れる最初のビジュアルからしてホールならではの規模感だ。開演時間になると、そこにスマホの縦型画面で切り取られたさまざまな夏を過ごすカップルや仲間などの情景が投影され、8月の終わりという時期も相まって少し切ない気分に浸る。そして、程なく紗幕の向こうで演奏するメンバーが映し出された。 オープナーは初期曲で最近再録バージョンをリリースした「帰り道」だ。伝えられなかった気持ち、後悔。大勢の人の中でゆっくり自分と向き合うライブの始まりに、バンドがこの日観せたいライブの一端を思う。平部雅洋(vo /g)が勢いよく「よろしく!」と挨拶し、オーセンティックなポップロックバンドとしての良さを「ブロッサム」「12月29日」で明らかにしていく。十九川宗裕(b)、前田将司(ds)のリズム隊はもちろん、サポートメンバーを含む5人のアンサンブルはとても安定感がある。 早口でライブタイトルを告げた後、平部は、ホールの距離の遠さなんかは問題じゃない、むしろホールならではのお楽しみを盛り込んできたことを大いにアピール。それはフロアに若干の硬さを見たからかもしれないが、演者もファンもまだ手探りなのもリアルだ。そのタイミングで「この夏、最高の思い出を作るために大阪と東京でワンマンやります。そのために作った曲を」と、新曲「純ラブ」を披露する。シティポップのニュアンスもある曲だが、メロディやギターリフに普遍的なサマーチューンの煌めきや切なさが含まれていて、しかも恋愛初期のぎこちなさを描く歌詞に笑顔になってしまう。 甘酸っぱい気分から、前田のドラムをフィーチャーし、セッション的なイントロからタフなロックンロールの「バブルス」、サビを部分的にファンに任せたりしつつ進んでいく「Shunari」、ピアノリフが日常的な事柄を歌う内容にポップスのオーソドックスな彩りを加える「(L)ONLY」への流れもいい。恋愛におけるすれ違いを描くレパートリーの中から平熱感のある曲が続き、普段の生活から自然とこの場所に接続できた印象を持った。この辺りも冒頭から盛り上げるライブハウスでのセットリストとの違いを体感する。 丹念なチューニングの後には平部と前田が夏の思い出を話すくだりに。平部は弟の挙式でハワイに行ったことがいい経験になったと言い、前田は絶対日焼けしたくないため酷暑でも長袖を着続けたという。ほんとに個人的なトピックなのが笑いを誘う。 そこから軽快なセクションが女性目線の「インスタント」から始まり、何をやっても何だか冴えない日々を歌う「サムデイルーザー」では平部はハンドマイクで歌っているだけかと思いきや、フロアに降りて1階のかなり奥まで歌いながら進み、ステージによじ登って戻ってきた。自分でスイッチを入れて場を沸かせているようにも見えたアクションが、曲の内容ともリンクしていくようだった。 続く「グッドバイ」では十九川のファンキーなフレージングが横ノリを誘い、曖昧な関係を歌う曲ながらウエットなムードはなく、バンドのタフさが表に出てきた印象を持った。