NHK大河「光る君へ」定子、悲劇の落飾 清少納言はまひろの助言で筆をとり…第21回みどころ
女優の吉高由里子が主演するNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)の第21回「旅立ち」が26日に放送される。 【写真】今回初登場するイケメン俳優 大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、1000年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部/まひろの生涯に迫る。19日に放送された第20回「望みの先に」では、花山院(本郷奏多)が矢を射かけられた事件を機に、定子(高畑充希)や伊周(三浦翔平)、隆家(竜星涼)ら中関白家に訪れた悲劇が描かれた。 いわゆる「長徳の変」である。「大鏡」や「栄花物語」を読んだことのある視聴者ならば、この運命が待ち受けていることを予感しながら物語を追ってきたはずだ。しかしながら、いざ実写になるとこんなにも胸が苦しいものだとは…。これまでも器の小さい幼稚な兄・伊周のフォローに心を砕いてきた中宮さまに訪れた過酷な運命、そして落飾。二条邸に忍ぶくだりでは、まひろ(吉高由里子)、清少納言/ききょう(ファーストサマーウイカ)のユーモラスな変装パートもあったが、そんなものも吹っ飛ぶ衝撃展開となった。 同時代に活躍した事実はありつつも、接点があったかどうか定かではない紫式部と清少納言のシスターフッド的な描写があるのは「光る君へ」ならではのサービスエピソード。毎週、今コラムを書きながら痛感しているが、書き手は総じて孤独である。もちろん、筆者が平安を代表する女流作家の2人に並ぶとは考えていないが、適切な語彙(ごい)が思い浮かばずに四苦八苦したり、この目で見た景色をどう表現するべきか思案しては挫折する、その繰り返しを、先人たちも重ねてきたのだと思う。ストーリー上、この時点では2人とも作家ではないけれど、経験をシェアし、自分を自分たらしめてくれる相手がいるのは幸せなことだ。 土御門殿では、シスターフッドにはほど遠い詮子(吉田羊)と倫子(黒木華)の緊張感あるヒリヒリした関係性が続く。おそらく狂言であろう詮子の呪詛(じゅそ)に気づき、しかるべき選択をする倫子のカンの鋭さはこの先のストーリーでも大きなカギになっていくだろう。まひろからの文を読む道長の背後にヌルッとたたずむ姿は「源氏物語」の夕霧の段、雲居の雁がちらつく。 まひろが道長に送った申し文によって、父・為時(岸谷五朗)は淡路守から越前守に国替え。父から道長との関係性を問われたまひろは「かつて私が恋焦がれた殿御にございました」と打ち明け、それでも「遠い昔に終わったこと」と前を向く。切なくもあるが、まひろの芯の強さも感じさせるいいシーンだった。越前の日々がきっとまひろに新たな深みをもたらすはずだ。 第21回は、定子の衝撃の出家直後から始まる。一条天皇(塩野瑛久)はショックを受け、激情のふちに。太宰府に赴くことを拒み逃げる伊周を捜索する実資(秋山竜次)はついに伊周を発見し、追い詰めていく。一方、定子を守れずに落胆するききょうを励ましたいまひろは、中宮のために何かを書いてはどうかとアドバイスする。そして越前へ旅立つ日が近づきつつあるまひろはある夜、道長に文を送り…という、「越前編」直前のクライマックス回である。 いろいろ盛りだくさんの回ではあるものの、筆者が書きたいことはただひとつ。前週の予告にもあったように、この回で「枕草子」が初めて登場する。「枕草子」は1000年にわたり多くの人が読んできたベストセラー随筆で、平安の華やかな日常にあこがれた読者は多いはずだが、シンプルに突き詰めると「あの人」のために書かれたもの。大好きなあの人が、内裏で風雅を愛でながら笑顔で生きていた証しである。お先に試写で拝見したが、感情がぐちゃぐちゃになった。“誰かのため”に書かれた文章は強く高潔で、美しい。(NHK担当・宮路美穂)
報知新聞社