【パラレルキャリア】地域活性化にも期待(11月20日)
人生100年時代にあって、本業を持ちながら第二のキャリアを築く「パラレルキャリア」への関心が高まっている。取り組み方は副業・兼業、ボランティアなど多岐にわたる。個人の活躍の場を広げると同時に、地域活性化の新たな力になる可能性にも注目したい。 政府は副業・兼業を働き方改革の一環で推進している。本業への影響や情報漏えいの懸念などから認めない企業が多いとされる中、厚生労働省が促進に向けたガイドラインを2018(平成30)年に策定したのを機に解禁する流れが強まった。 総務省の就業構造基本調査によると、副業の希望者は年々増加傾向にある。2022(令和4)年は493万4千人で20年前の約1・6倍に増えた。副業を持つ人は304万9千人で約1・3倍に伸びている。 多様な働き方の選択肢になるものの、慎重な対応を求める意見も少なくない。福島大の熊沢透教授は、副業解禁が企業の賃金の生活費を保障する機能が低下する契機にもなりうる、とみている。過労防止対策も十分に定まっていないとの指摘もある。普及には雇用者側の理解と、適切な労働管理を含めた就労環境の一層の整備が求められている。
一方、ボランティアや地域貢献の要素が強いパラレルキャリアへの関心の高まりを、地方への移住や関係人口の拡大につなげる試みもある。 県は、パラレルキャリア人材共創促進事業として県内の事業所、団体と専門スキルを持つ副業人材とのマッチング事業を2020年度から展開し移住につながる成果も出ている。専用サイトでの事業の紹介、人材の募集、マッチングに向けた面談や契約、その後の対応までを全て無料で支援するのが特徴だ。応募者は延べ約3900人に上り、首都圏からが大半を占める。 広告デザインなど500件以上が成立している。ただ、応募者数に比して成立件数は決して多いとは言い難い。貴重な人材を広く活用するためにも県は事業の周知を徹底し、人材の受け皿となる副業案件の掘り起こしに努めるとしている。労働人口の先細りが避けられない現状で、福島県と関わりを深める人材を地域産業の担い手としても増やしてほしい。(三神尚子)