ジェームズ・ボンドも愛する特別なシャンパーニュの魅力とは?
芳醇かつエレガントな味わいで、シャンパーニュファンからの支持が高いのが「ボランジェ」だ。映画"007"シリーズのジェームズ・ボンドが愛飲する銘柄として知られ、また、英国王室御用達としてロイヤルウェディングに用いられるなど、多くのシーンを華やかに彩ってきた。 【写真】「ボランジェ」の最高級キュヴェ「ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ 2012」750ml ¥297,000 「ボランジェ」が誇る最高級キュヴェ「ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ」は、テロワールとメゾンの歴史を体現するシャンパーニュだ。2023年11月、醸造責任者のドゥニ・ブネア氏が満を持して来日、おそらくはかの"007"もまだ飲んでいない、この特別なキュヴェの魅力について語ってくれた。
メゾンの創業は1829年。職人の手によるクラフトマンシップを何よりも大切にし、今も伝統的な木樽発酵を行う数少ない造り手でもある。メゾンが位置するアイ村は、最高品質のピノ・ノワールを産出する"グラン・クリュ(特級畑)"の村として有名で、「ボランジェ」はこの地の利を最大限に生かし、素晴らしい味わいのシャンパーニュを生み出している。 それを象徴するトップ・キュヴェのひとつが「ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ 2012」だ。"ヴィエイユ・ヴィーニュ"とは「古木」の意で、フィロキセラ(害虫)禍を逃れて生き残り、健康に年を重ねた自根(接ぎ木をしていない樹)の特別な畑「ショード・テール」と「クロ・サン・ジャック」のブドウだけで造られた特別なシャンパーニュだ。10年の熟成を重ねた、深みのあるゴールドの色合いが印象的。マーマレードや砂糖漬けのレモン、ローストしたアーモンドの香りで、重厚感とエレガンスを持ち合わせている。 実はこのキュヴェは、3代目ジャック・ボランジェの妻であるマダム・リリー(エリザベス・リリー・ボランジェ)の発案によって生み出されたものだ。彼女は、夫亡き後、第二次世界大戦のさなかにシャンパーニュを造り続けてメゾンを守り抜き、戦後は大きく発展させた伝説の人物で、今でもシャンパーニュ地方で尊敬を集める存在だ。 この特別なシャンパーニュの誕生のきっかけは、1967年のある日、イギリス人ジャーナリストがメゾンを訪ねたことだった。前述の「クロ・サン・ジャック」のブドウを、どのキュヴェに使用しているのかと尋ねたところ、マダム・リリーは、メゾンのベーシックライン「ボランジェ スペシャル キュヴェ」に使用している旨を話した。すると、「なんてもったいない!」と返され、彼女はこの素晴らしい畑のブドウだけを使った特別なキュヴェを造ることを決断したのだという。